2021 Fiscal Year Research-status Report
嗅覚刺激による想起経験が高齢者の認知機能および精神的健康に及ぼす影響に関する研究
Project/Area Number |
17K13924
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Research Institution | Osaka Sangyo University |
Principal Investigator |
山本 晃輔 大阪産業大学, 国際学部, 准教授 (60554079)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 嗅覚 / 自伝的記憶 / 加齢 / 認知機能 / 嗅覚同定能力 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は大別して,3件の研究を行った。研究1では,本研究における重要な指標の1つである高齢者のための嗅覚刺激によって想起される自伝的記憶の機能尺度の開発に従事した。若年者600名,高齢者600名を対象として行われたオンライン調査の分析結果から,「ポジティブ感情の喚起」,「アイデンティティ」,「コミュニケーションの促進」,「ネガティブ感情への対処」などの因子が発見され,その信頼性および妥当性が示唆された。研究2では,嗅覚同定能力検査キットであるOpen Essenceを用いて,若年者30名,高齢者29名の同定能力を測定しつつ,それらを刺激とした自伝的記憶の想起課題を実施した。実験の結果,若年者では同定能力が高い群がそれが低い群よりも記憶の鮮明度が高くなったが,高齢者では同定能力の高低群間に記憶の鮮明度の違いが確認されなかった。嗅覚イメージ能力では,高齢者が若年者よりも高いことから,高齢者では嗅覚イメージ能力が記憶の想起を下支えしている可能性が考えられる。研究3では,若年者と高齢者における嗅覚刺激によって想起される記憶内容の違いについてテキストマイニングを用いて検討した。検討の結果,若年者と高齢者では想起される記憶の内容に相違点がみられる可能性が示唆された。これらの知見は2022年度の学会で発表予定である。関連する研究発表も含め,2021年度の学会発表件数は計10件であった。学術論文として,計3編が採択された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
COVID-19の影響により発表の場として考えていた国際学会が延期されるなど,研究の進展に遅れが生じたものの,3件の研究を行い,学会発表を10件行った。またその一部を3編の論文とした。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き,若年者および高齢者を対象とした実験,調査を行う。また,2021年度の成果について,積極的に学会発表,論文化を行う。延長後の最終年度となるので総括を行う。
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Causes of Carryover |
理由:COVID-19により,国際学会の延期,高齢者への実験が困難な状況であったため,遅延が生じた。それに要する費用が次年度に繰越となった。繰越額を踏まえて,次年度は計画的に執行する予定である。
計画:2021年度に引き続き,実験およびWEB調査を行う。そのための費用,データ入力・分析補助の人経費,研究成果を発表する出張費,掲載論文の審査料,抜刷代等が主な使用額にあたる。
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