2022 Fiscal Year Research-status Report
嗅覚刺激による想起経験が高齢者の認知機能および精神的健康に及ぼす影響に関する研究
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17K13924
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Research Institution | Osaka Sangyo University |
Principal Investigator |
山本 晃輔 大阪産業大学, 国際学部, 准教授 (60554079)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 嗅覚 / 自伝的記憶 / 加齢 / 認知機能 / 嗅覚同定能力 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度はこれまでの調査等で得られたデータの整理や再分析,ここまでの研究データの論文化に努めた。嗅覚刺激によって想起される記憶の特徴と主観的幸福感の関連性についてのデータを再分析した結果,高齢者においてはポジティブな記憶を想起するほど,主観的幸福感が高まる可能性が示唆された。この結果については,次年度論文化する予定である。 関連する研究発表も含め,2022年度の学会発表件数は計7件であった。また,学術論文として計5編が採択された。このうち,1件は本研究における重要な指標の1つである高齢者のための嗅覚刺激によって想起される自伝的記憶の機能尺度の開発についての論文であり,Frontiers in Psychology誌に掲載された。この尺度は「ポジティブ感情の喚起」,「アイデンティティ」,「コミュニケーションの促進」,「ネガティブ感情への対処」の4因子から構成され,その信頼性および妥当性が示唆された。加えて,高齢者では,若年者よりも「ポジティブ感情の喚起」,「アイデンティティ」,「コミュニケーションの促進」の因子に関する得点が高いことも示されている。これらの機能は高齢者において独自な結果である可能性が考えられる。また,高齢者が若年者よりもポジティブな記憶の想起が優先される現象を加齢性ポジティビティ効果というが,嗅覚刺激でもこの現象が確認されることを報告した研究が同じくFrontiers in Psychology誌に掲載された。さらに,この研究では想起された記憶の想起特性と嗅覚刺激の感情特性との関連性を示すことを通して,これまで不明瞭であった加齢性ポジティビティ効果の原因の1つとして,想起手がかりの感情特性を提案した。その他の関連論文は,Journal of Japan Association on Odor environment,Journal of Human environmental studies,Aroma Researchに掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
COVID-19の影響により発表の場として考えていた国際学会が延期されるなど,研究の進展に遅れが生じたものの,学会発表を7件行った。またその一部を5編の論文とした。
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Strategy for Future Research Activity |
延長後の最終年度となるので,ここまでの研究成果に関する研究発表および論文化を行い,当該研究の総括を行う。
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Causes of Carryover |
研究成果を発表する国際会議の参加費,および出張費,掲載論文の抜刷代等が主な使用額にあたる。
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