2020 Fiscal Year Research-status Report
児童自立支援施設における包括的アフターケア・プログラムの開発
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17K13937
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
望月 直人 大阪大学, キャンパスライフ健康支援センター, 准教授 (20572283)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 児童自立支援施設 / アフターケア / 発達障害 / トラウマ |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度について, 新型コロナウィルスの影響で研究協力施設を訪問することができず, 調査に関する協議ができなかったため,調査を進めることができなかった。そのため, 施設での研究活動が全く実施できなかったが, 研究資料や文献のレビューを行い,次年度に向けて半構造化面接のインタビュー項目,アンケート項目の選定を行った。その一環として, 不安障害やトラウマとの関連が深い高敏感者(Highly Sensitive Person:HSP)について, 自閉症スペクトラム(以下, ASD)との判別するための要因について検討した。概要を以下に記す。 HSPとASDはいずれも感覚の敏感さをもつため,両者の併存や判別が議論となる。教養科目・教職科目の心理学を受講 する大学生141名(男性53名, 女性87名, その他1名, M=21.6歳, SD=3.15) に, ①HSP尺度短縮版 , ②エンパス尺度, ③自閉性指数, ④認知的フュージョン質問紙, ⑤心理的柔軟性, ⑥対人反応性指標を実施 した。重回帰分析の結果, AQ に対しては, 男女共に共感( 情動直感・想像性) の係数が負であり, CFQ は関連していなかっ た。HSPに対しては,予想に反して,男性においてCFQ の係数が正で, 共感(共感的関心)の係数が負であった。なおHSP尺度とASDは正の相関があり(r = .25), 両者の併存を視野に入れたさらなる検討が必要であると推察された。これらの結果から, 共感性の高低による両者の区別は可能と示唆されるが, 思考の硬さという特徴では判別が困難であることが明らかとなった。本研究との関連では, 児童自立支援施設入所児においても発達障害とトラウマの併存や判別が議論となることがある。HSPを鍵として,両者を判別し, 個々に合わせたアフターケア・プログラムの開発が必要となるだろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2020年度については前年度末の時点からの新型コロナウィルス拡大状況の影響が大きく, 研究協力施設である児童自立支援施設に訪問して, アンケート内容の確認など施設側との協議ができないままであった。そのため,研究Ⅱの全国の児童自立支援施設へのアンケート調査や研究Ⅲの介入研究を実施できなかった。 以上により, 新たな研究活動を全く進めることができずに研究の進捗に大きな遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度を通して,社会的状況の変化が期待できないことが明らかとなったため,次年度についても施設への訪問は困難と考えている。その対応として,状況によっては研究協力施設側のICT体制の整備(PC貸与,wifiルーターの貸与など)にも研究費からの支出を検討している。それにより,オンライン協議やオンラインでの調査実施が可能になるだろう。一方で,研究協力施設は地方の児童実支援施設であるために,都市圏に比してICT化についてはスムースには移行できないことも予想されるので,施設側の理解を高める努力も継続する。
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Causes of Carryover |
主な理由は, コロナ禍の状況であったため, 研究協力施設と詳細を直接話し合いながら詰めていく必要がある研究II・IIIの追跡/介入研究が, 施設の状況に影響され全く実施できなかったことである(全国の施設調査, 調査実施のための施設訪問のための旅費, 親支援プログラム実施など)。そのために, 旅費, 人件費, 物品費の使用が当初計画よりも下回ることとなった。本年度は, 次年度にオンラインでのアンケートやインタビューが実施できるように, アンケート内容検討のための書籍や標準化された心理尺度, ICT関係の備品等の購入を行った。 次に,次年度の使用計画であるが,研究II・IIの追跡/介入研究については,社会状況の変化や,施設や当事者の児童や保護者との調整が必要となる。社会的状況や研究の進捗状況を鑑みると, とりわけ, 研究IIIの介入研究は研究期間内の研究遂行は難しいことも予想される。 次年度については, 研究II(全国の児童自立支援施設への調査)に関する研究経費に主に使用予定である。想定する懸念としては, 児童自立支援施設といった社会福祉施設はオンライン化などにおいて, 都市圏と地方では大きな格差がある。本研究の協力施設は, 地方になるため, 施設側へのICT機器の貸与等オンライン対応(調査等)に必要な物品費購入が生じる可能性がある。使用計画についても適宜検討することとする。
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