2018 Fiscal Year Research-status Report
若年者自殺対策のための傍観者心理解析と支援行動促進プログラム作成
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17K13946
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大塚 尚 東京大学, 学生相談ネットワーク本部, 助教 (60735075)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 自殺対策 / 青年 / 傍観的心理 / 援助行動 / プログラム |
Outline of Annual Research Achievements |
まず、今年度は本研究課題の先行調査という位置付けである、大学生の生きづらさと希死念慮の関連を調査した質問紙調査の結果をまとめ、Asian Journal of Psychiatryで公表した(Otsuka & Anamizu, 2019)。 さらに、2018年度は東京大学、名古屋大学、新潟県立大学、国際医療福祉大学などの心理臨床家や精神科医と数回の協議を重ね、周囲の人の希死念慮に対する現代青年の反応と対応を捉える2つの尺度を独自に作成した。そして、両尺度を用いて2つの質問紙調査を実施した。 調査1は両尺度の因子構造や内的整合性を確認することと現代の学生の自他の希死念慮の経験などを明らかにすることを目的に、直接配布とWeb調査形式で226名の学生(大学生、専門学校生など)に調査を行った。用いた尺度は両尺度、Attitude Toward Suicide(ATTS-J)などである。結果として、両尺度はそれぞれ4因子と3因子として因子的妥当性と内的整合性が確認された。さらに希死念慮を経験している学生は23%、周囲の希死念慮を経験したことがある学生は19%であり、自身の希死念慮を経験していない人の方が周囲の人の希死念慮に不安や傍観的な反応を示す傾向にあることを明らかにした。この調査結果は、東京大学学生相談所紀要第26号で公表した(大塚ら,2018)。 調査2はこれを拡大し、青年の希死念慮への反応と対応の関連や、周囲の希死念慮への援助行動阻害要因などを明らかにするため、18歳~29歳の青年(正規雇用者、非正規雇用者、学生、無職者など)556名にWeb調査を実施した。現在結果を整理中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究開始年度の2017年度に研究代表者の所属変更があり、それに伴い新たな研究環境を再構築し直す必要が生じたため、2017年度の計画に大幅な遅れが生じた。 そのため1年間の延長申請を行い、当初の2年間の計画を2019年度までの3年間の計画に変更した。計画変更後は、調査実施・成果公表ともに概ね順調に進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度に実施した質問紙調査の結果をもとに、2019年度中旬を目処に周囲の希死念慮者への主体的な援助行動促進のためのプログラム作成を予定している。2019年5月現在、東京大学、国際医療福祉大学などの専門家と協議を重ね、プログラム案を検討中である。 さらに2019年度後半に、青年数名を対象としたプログラム試行と意見聴取を実施し、適宜内容の修正を行い、最終的なプログラムを作成していく予定である。作成したプログラムはインターネットなどを通じて、広く社会化していくことを予定している。 また、2018年度に実施した質問紙調査2の結果をまとめ、国際誌に投稿することを予定している。
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Causes of Carryover |
初年度の2017年度に研究代表者の所属先変更に伴い、研究遂行が遅れ、当初の2年間の計画を3年間の計画に変更したため、あらたに次年度使用額が生じた。 今後、自殺対策プログラム作成の専門業者等への委託、論文執筆時の英文校閲、掲載料などに使用する予定である。
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