2017 Fiscal Year Research-status Report
自覚的認識に注目した嗜癖問題の包括的理解と臨床的介入に関する研究
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17K13953
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
石田 哲也 久留米大学, 医学部, 助教 (20758776)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 嗜癖 / 熱中 / 依存症 / ストレス対処 / 心理教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は研究計画に基づき主に以下の4つの研究を行った。 (1)熱中と嗜癖の弁別基準に関して,文献レビューおよび,すでに収集済みである大学生362名を対象とした健常群データにもとづき,インターネット依存を切り口として理解と対応についてまとめた。成果は以下の市民講演会で発表した(石田哲也. インターネット依存症は病気?うまく付き合う方法を考える.福岡市精神保健福祉センターハートメディア2017市民講演会.2017/10/12.福岡)。 (2)嗜癖問題への心理的介入の方法論に関して,衝動的行為という視点から行動の改善のための心理教育面接の臨床実践報告を行い,心理的介入における心理教育の位置づけについて考察した。成果は以下の学会で発表を行った(石田哲也・大江美佐里・内村直尚. 神経症圏患者への短期心理教育面接の効果検証.九州精神神経学会第70回大会.2018/01/25,26.宮崎)。 (3)嗜癖問題に関するストレス対処方略に利するため,看護師・助産師の職場ストレスと職場環境について整理し,ストレス対処方略における環境の重要性についてまとめた。成果は以下の学会で発表した(石田哲也・大江美佐里・松岡美智子・津田真実・内村直尚. 精神科看護師の職場ストレスと期待する職場環境.日本トラウマティック・ストレス学会第16回大会.2017/06/10,11.東京,石田哲也・大江美佐里・内村直尚. 周産期病棟に勤務する看護師・助産師の職場ストレスと期待する職場環境.第37回日本社会精神医学会.2018/03/01,02.京都) (4)WHOが作成したProblem Management Plus(PM+)日本語版を共同で作成した。これは嗜癖問題への心理的介入プログラムのモデルとなる,5回の短期面接のテキストとマニュアルである。成果は学会シンポジウムで発表予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
不健康的な嗜癖と健康的な熱中との差異に関する研究計画に関連し,文献レビューおよび,すでに収集済みである健常群362名のデータを用いた検討を行い,成果を講演会で発表した。その結果,習慣の有害性の判断基準となるアセスメントについて,身体的影響,経済的損失,社会的問題,対人関係の変化という要素が重要であるという知見が得られている。嗜癖概念が拡大している現状において,これらの知見はある習慣の健康度を判断する基準として有用であり,次年度以降の患者群に対する習慣への没入尺度の信頼性・妥当性の検討という質問紙調査に繋がるものである。 また,行動変容技法および心理力動的理解に基づく心理教育テキスト作成という研究計画に関連し,複数の心理教育テキストを用いた,臨床心理士による心理教育面接の実践と症例報告を行った。その結果,心理的介入における心理教育の位置づけについて新たな知見が得られており,成果は学会で発表している。単にテキストを用いて行動変容技法を行えばよいのではなく,背景にある個別の心理メカニズムを考慮した言語的介入が有用であると考えられる。これらの研究は次年度以降の嗜癖問題に対する心理的介入プログラムの開発に有用であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
患者群における習慣への没入尺度の信頼性・妥当性の検討に向けて,アンケート調査実施の具体的な準備を行う。すでに作成している習慣への没入尺度に加えて,CAGE,GHQ28,BASIS32,3DSS等の尺度を用いて信頼性・妥当性を検討する予定である。対象者は精神科外来および入院患者を想定している。 質問紙調査は横断型研究であり,嗜癖問題のアセスメントを目的とした研究であるが,嗜癖問題に対する効果的な心理的介入プログラムの開発が必要である。これまでに実施した心理教育面接や短期介入プログラムの知見を活かし,嗜癖問題の理解と対応をまとめた心理教育テキストを作成する。テキストは嗜癖問題の認知行動的理解,ストレス対処法,行動活性化,ソーシャルサポートの強化を含む予定である。また面接実施に当たって,心理力動的な介入スペクトラムを意識した治療者用マニュアルを作成する。作成されたテキストを用いて短期心理教育面接を行い,嗜癖問題に対する効果を検討する。
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Causes of Carryover |
当該年度は質問紙調査の準備を進め,アンケートの印刷費および統計ソフトの購入を次年度以降に繰り越したことで,次年度使用額が生じた。次年度は調査実施のための物品費,旅費,人件費等の経費の執行が行われる予定である。
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