2018 Fiscal Year Research-status Report
自覚的認識に注目した嗜癖問題の包括的理解と臨床的介入に関する研究
Project/Area Number |
17K13953
|
Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
石田 哲也 久留米大学, 医学部, 助教 (20758776)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 嗜癖 / 熱中 / 依存症 / 心理教育 / ストレスマネジメント |
Outline of Annual Research Achievements |
研究計画に基づき以下の研究を行った。 1)熱中と嗜癖の弁別に関して,ギャンブル依存およびスマートフォン依存を切り口としてまとめ,以下の研修会で講演した(なぜアディクションになるのか?~心理的理解と対応,益田圏域ギャンブル依存研修会,2018,島根.携帯・スマホとのつきあい方を考える対話集会,平成30年度水巻中学校プロジェクト企画,2018,福岡)。 2)嗜癖問題への心理療法的介入の方法論に関して,短期精神療法の臨床実践報告を行い心理療法的介入における心理教育の意味づけについて考察した。成果は以下の論文にまとめた(石田哲也他. 神経症圏患者への短期心理教育面接の心理療法としての意味づけ.九州精神神経学会誌, 64, 63-70, 2018)。 3)ストレス対処という文脈で嗜癖問題を考察するため,看護師・助産師の職場ストレスと職場環境について整理し以下の学会で発表した(Ishida T. et al. Burnout and Psychological Symptoms among Nurses and Midwives Working in the Perinatal Wards: A Cross-cultural Study between Japan and Switzerland. ISTSS 34th Annual Meeting, 2018. Washington DC)。 4)嗜癖問題への心理療法的介入プログラムの汎用性の高いモデルとして参考にするため,WHOが作成したProblem Management Plus(PM+)日本語版を共同で作成した。成果は学会シンポジウムで発表した(石田哲也. 「問題対処プラス」:逆境にあるコミュニティでの短期介入プログラム.日本トラウマティック・ストレス学会第17回大会シンポジウム.2018)。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
嗜癖問題に対する心理療法的介入に関して,認知行動変容技法および精神力動的理解に基づく心理教育テキストを作成中である。既存の心理教育テキストを用いた臨床心理士による短期心理教育面接について症例報告を行い,心理療法的介入における心理教育の意味づけについて新たな知見が得られており,成果は論文として発表している。単にテキストを用いて認知行動変容技法を行えばよいのではなく,背景にある個別の心理メカニズムを考慮した心理療法的介入が有用であると考えられる。これらの研究は次年度以降の嗜癖問題に対する心理的介入プログラムの開発に有用であると考えられる。 健康的な「熱中」と不健康的な「嗜癖」との差異に関する研究計画に関連し,文献レビューおよび,すでに収集済みである健常群362名のデータを用いた検討を行い,成果を講演会で発表した。習慣の有害性のアセスメントについて,身体的影響,経済的損失,社会的問題,対人関係の変化という要素が重要であるという知見が得られており,これはギャンブル依存やスマートフォン依存といった現代的なテーマに関しても汎用可能であることを確認している。嗜癖概念が拡大している現状において,これらの知見はある習慣の健康度を判断する基準として有用であり,次年度以降の患者群に対する習慣への没入尺度の信頼性・妥当性の検討という質問紙調査に繋がるものである。
|
Strategy for Future Research Activity |
患者群における習慣への没入尺度の信頼性・妥当性の検討に向けて,アンケート調査実施の具体的な準備を行う。すでに作成している習慣への没入尺度に加えて,GHQ28,BASIS32等の尺度を用いて信頼性・妥当性を検討する予定である。対象者は精神科外来および入院患者を想定している。質問紙調査は横断型研究であり,嗜癖問題の汎用性の高いアセスメントツール作成を目的とした研究である。 嗜癖問題に対する効果的な心理療法的介入プログラムの開発を行う。これまでに実施した心理教育面接や短期介入プログラムの知見を活かし,嗜癖問題の理解と対応をまとめた心理教育テキストを作成する。テキストには嗜癖問題の認知行動的理解,ストレス対処法,行動活性化,ソーシャルサポートの強化を含む予定である。また面接実施に当たって,精神力動的理解に基づく支持ー表出スペクトラムを意識した治療者用マニュアルを作成する。作成されたテキストを用いて短期心理教育面接を行い,嗜癖問題に対する効果を検討する。
|
Causes of Carryover |
当該年度は質問紙調査の準備を進め,アンケートの印刷費および心理教育テキストの印刷費を次年度以降に繰り越したことで,次年度使用額が生じた。次年度は調査実施のための物品費,旅費,人件費等の経費の執行が行われる予定である。
|
Research Products
(7 results)