2017 Fiscal Year Research-status Report
成人と乳児の視線知覚における情報統合過程の実験的検討
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17K13963
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
大塚 由美子 愛媛大学, 法文学部, 准教授 (20757645)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 視線知覚 / 幾何学的手がかり / 知覚発達 / 顔認知 |
Outline of Annual Research Achievements |
3DCGで作成した眼球・顔モデルを用いて、両眼顔画像・左目単眼(右目閉眼)顔画像・右目単眼(左目閉眼)顔画像を作成し、両眼から知覚される視線方向と単眼から知覚される視線方向、これらの視線方向知覚に対する顔向きの影響を比較する実験を実施した。さらに、3DCGで作成した眼球・顔モデルの着色部を変化させることで、目領域、瞳、瞳孔に相当する画像領域のみを描いた画像を作成することで、刺激画像内でのこれらの領域の位置情報の分析を行った。この画像分析結果と知覚された視線方向を比較することで、視覚システムが画像内のどのような幾何学的情報を視線方向の推定に利用しているのかを検討した。その結果、瞼等に遮蔽された部分を含めた瞳全体の中心位置の方が、露出した瞳領域の中心位置よりも知覚された視線方向との類似性が高いことが示された。 また、乳児を対象として瞳の位置情報の明瞭さの変化により眼球と顔向き情報の統合過程について検討する実験を行った。発達初期において「目」と「顔向き」の情報が知覚上の視線方向を決定する際に持つ比重が画像内での瞳の位置情報の明瞭さによって影響される可能性を検討するため、瞳の位置情報の明瞭さの異なる画像を用いて直視視線画像に対する選好注視を比較する実験を行った。これまでのところ、瞳の明瞭さの低下した画像で直視視線画像への選好注視が消失するという結果が得られたが、「目」と「顔向き」の情報の比重が変化することを示すような結果は得られていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
乳児実験においては当初予測したような結果は得られなかったが、成人を対象とした実験では視線方向に対する幾何学的手がかりと知覚上の視線方向の関係を明らかにするための一定の成果を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
成人を対象とした実験では、ここまで視線方向に対する幾何学的手がかりについての検討を進めてきた。その結果一定の成果が得られているが、視線方向手がかりとしては目領域内の輝度分布も重要な役割を持つことが先行研究から明らかにされている。今後はさらに目領域内の輝度分布情報と視線知覚の関係についても検討をすすめる。乳児実験については刺激画像の特性を見直すなど計画の修正を行う。
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Causes of Carryover |
次年度実施予定の実験の準備として予備実験を行う予定であったが、研究結果の論文化の上で、画像のシミュレーション分析を行うことが急務であると判断し、予備実験の実施を次年度に先送りした。このため、予備実験実施に関連して支出予定であった費用の次年度使用額が生じた。成人データについては現在、論文執筆を進めており、投稿・論文化を進める予定である。また、昨年度予定していた予備実験とそれに基づく本実験の実施を開始する。次年度使用額は翌年度分の助成金と合わせてこれらの計画の遂行のために用いる。
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