2019 Fiscal Year Research-status Report
広帯域音声が有する豊かな質感の音声内起源およびその知覚機構の解明
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17K13964
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
西村 方孝 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 助教 (80613398)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 時間精度 / デコーディング / 精度柔軟性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、研究代表者が考案した「実験動物の感覚を高い確からしさで読み取るための行動実験手法」に関する論文の出版を目指し、前年度までに得ていた動物実験のデータの解析・シミュレーションを更に進め、その実験手法の妥当性を主張するための証拠を集めた。 その証拠を集める作業を進める中で、「動物の注意」だけでは説明が難しい「行動課題への集中」を示唆する「動作時間精度の動的な上昇」が明らかになったため、「実験動物の感覚を高い確からしさで読み取るための行動実験手法」に関する一連の論文の最初の論文として、「新規実験手法を用いて見られたモルモットにおける動作時間精度の動的な上昇」として論文を取りまとめるに至った(現在投稿中)。 「動作時間精度の動的な上昇」は一見すると、本研究がターゲットとしている「音声の質感」と関係がないように思えるかもしれないが、本研究における心理実験後の被験者への聴取からも言えることとして、僅かな感覚の違いを知覚するためには、感覚を研ぎ澄ます必要がある。この感覚を研ぎ澄ますという行為には、音声への注意や音声弁別課題への集中が強く関与していると考えられることから、「動作時間精度の動的な上昇」の示唆する注意や集中は、必ずしも「音声の質感」と関係がないとは言えない。時間感覚や音声感覚が研ぎ澄まされる脳内メカニズムが解明されることにより、「豊かな質感」の知覚機構の一端が明らかになる可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究代表者が考案した「実験動物の感覚を高い確からしさで読み取るための行動実験手法」の論文の修正および再投稿に想定よりかなり長い時間を要しており、進捗としては遅れている。本研究では、その実験手法が動物実験全体の根幹部分にあるため、最優先して論文出版を目指さなくてはならない。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒトが音声に感じる豊かな質感(繊細な感覚)のモデルとして動物を用いるためには、動物の繊細な感覚を定量的に評価する必要があるものの、動物の反応または行動のみを用いて評価しなくてはならない。繊細な感覚の評価を実験動物で行う手法を研究代表者が考案したものの、まだ論文として出版されておらず、現時点では世界的に認められ確立された手法となっているとはいえない。その方法そのものの妥当性を検討するためには、コンピュータ・シミュレーションや計算モデルを用いた統計学的な裏付けが求められる。その裏付けを速やかに示すための解析等を進めることが、現時点で考えられる最善の推進方策の一つとなっている。
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Causes of Carryover |
新規に確立した実験手法に関する論文を出版するための再データ解析および再執筆等の再投稿に必要な処置に時間を要し、出版費の支払いが次年度になり、使用する動物の数も当初の予定より少なくなったため。
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