2017 Fiscal Year Research-status Report
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17K13969
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Research Institution | St.Mary's College, Nagoya |
Principal Investigator |
高瀬 慎二 名古屋柳城短期大学, その他部局等, 准教授(移行) (60565886)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 両眼視 / 両眼視野闘争 |
Outline of Annual Research Achievements |
両眼視の達成には左右眼間の視覚入力の促進的、抑制的な相互作用が関与しているが、そのメカニズムについては、不明な部分も多い。本研究では、左右眼刺激が異なるときに生じる視野闘争事態や単眼のみに視覚刺激を提示するPermanent Suppression事態と類似した刺激条件を利用して、心理物理学的手法や生理指標の測定から両眼間抑制の詳細な条件分析を行い、その起源を解明しようと試みている。平成29年度は、左右眼刺激が一致し、両眼間で抑制が生じにくいと考えられている条件で、不一致な場合よりも抑制が強まるという研究代表者が発見した刺激事態に関与する要因について検討を行った。具体的には、両眼間で一致する正弦波縞刺激を提示し、一方の眼の刺激の中心部に一様な輝度の刺激を提示すると、その一様な輝度刺激が長時間安定的に知覚され、反対眼からの視覚入力は抑制された。一方で、両眼間で不一致な縞刺激を提示したときには、そのような安定的な抑制は見られなかった。この時間的に安定的な抑制には両眼間の輝度の一致が主に関与していることが示唆されている。 また、同時に上述の視覚入力の抑制について、一様な輝度刺激の知覚されている時間といった「時間」を指標にするだけではなく、コントラスト増分閾を計測することで、「強度」を指標として、一致、不一致刺激間での抑制の差についても検討したが、これについては一致、不一致刺激において差は認められていない。こうした抑制の「時間」と「強度」との間でみられる違いについても今後検討していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究は、おおむね当初の計画通り順調に進んでいる。平成29年度で得られた研究結果を今後随時、学会で発表する予定であり、また、論文を執筆し、投稿する準備を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、当初の計画通り、一致、不一致刺激で生じる抑制条件下での様々な波長の光点検出を主に行う。Permanent Suppressionによる一眼の抑制と視野闘争によって生じる一眼の抑制が異なるものであるとする先行研究(Ridder, Smith, Ronald, Harwerth, & Kato, 1992; Ooi & Loop, 1994)があり、特に視野闘争の場合にはS錐体が処理する短波長の抑制が顕著に生じ、Permanent Suppressionでは、そのような傾向は認められていない。このことは、一見類似している両者において、両眼間の抑制メカニズムが異なることが示唆される。しかし、先行研究では、両条件の比較で大きく異なる刺激を用いていたため、結果の違いが「刺激」あるいは「抑制のメカニズム」のどちらの違いによるものか明確にはわからない。本研究で用いる刺激は一致刺激はPermanent Suppression事態、不一致刺激は視野闘争事態と類似する刺激条件となり、また、刺激の成分としては一致、不一致で同様となる条件を用い、先行研究の波長による光点検出感度の違いを再検討する。 併せて、平成29年度の研究において疑問として生じた抑制の「時間」と「強度」の違いについても解明するために実験を行う。 研究の最終年度となるため、平成29年度の研究結果も踏まえて、両眼間抑制のメカニズムについてモデル化を試みる予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた主な理由は、平成29年度は結果を発表するのに適切な学会に参加できず、研究成果の発表を行わなかったためである。しかし、平成30年度は前年度分も合わせて学会、誌上発表を行うため、当初の予定の助成額を利用する計画である。
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