2017 Fiscal Year Research-status Report
九鬼周造の歴史哲学から見た「京都学派教育学」―九鬼と西田の比較研究を基礎として
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17K13972
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
古川 雄嗣 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (50758448)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 偶然性 / 九鬼周造 / 西田幾多郎 / 歴史哲学 / 道徳 / 教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は、前年度に引き続き、西田幾多郎の哲学に関する基礎研究を遂行すると同時に、それと並行して、九鬼周造の哲学の発展的研究にも力を注いだ。具体的な研究成果としては、以下の2点があげられる。 第一に、九鬼周造の「自然」概念を基礎としつつ、西田、和辻らの哲学もふまえて、「日本人の自然観」という問題に関する総合的な考察を行ない、それを講演「「日本人の自然観」という問題」(於・京都大学こころの未来研究センター)として発表した。ここで、特に新たな知見として得られたのは、フランスの哲学者で日本文化研究者であるオギュスタン・ベルクの「風土」の哲学である。ベルクの「風土」の概念は、相互主体的な自然と人間との無限の相互浸透の運動として捉えられている。これは、九鬼と西田の哲学を基礎とする歴史哲学を展望する本研究にとって、その基礎的論理の構築に寄与するものであることが期待できる。同時に、西洋の「自然支配」と東洋(日本)の「自然随順」との安易な二項対立図式に対するベルクの批判も、本研究と問題意識を共有しており、本研究の今後の展開にとって、きわめて重要な知見であるといえる。 第二に、90年代後半以降の一連のいわゆる「大学改革」に関して、教育における偶然性という問題を基軸とする批判的考察を行ない、その成果を、共編著『反「大学改革」論』(ナカニシヤ出版)所収の論文その他にまとめた。この研究は、一見、本研究の主題とはかけ離れているが、九鬼周造の偶然論や、それを基礎とした現実の歴史的展開の論理に基づいた、教育現実と教育実践の哲学的分析であるという点で、本研究の重要な発展的成果として位置づけられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「研究実績の概要」に記した第二の研究について、共編著の上梓後、講演・執筆等の依頼が複数あり、想定外に時間を費やしたため、西田幾多郎の哲学に関する基礎研究、ならびにそれと九鬼周造の哲学との比較研究は、当初計画よりも、やや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、精緻な文献研究による基礎研究を要としつつ、哲学分野と教育学分野双方の研究協力者に専門的知見の提供を仰ぎつつ、教育哲学的展開の可能性を模索し、その研究成果を、随時、紀要論文等にまとめて発表する。
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Causes of Carryover |
「現在までの進捗状況」が「やや遅れている」ことの理由に基づき、当初計画において使用予定であった書籍費および旅費を次年度に使用する計画である。
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Research Products
(7 results)