2018 Fiscal Year Research-status Report
九鬼周造の歴史哲学から見た「京都学派教育学」―九鬼と西田の比較研究を基礎として
Project/Area Number |
17K13972
|
Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
古川 雄嗣 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (50758448)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 偶然性 / 必然性 / 運命 / 自然 / 道徳的実践 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に引き続き、西田幾多郎と九鬼周造の哲学に関し、特に「偶然」及び「自然」の概念に注目しつつ、基礎研究を遂行した。その具体的な研究成果としては、第一に、九鬼の哲学における「自然」の概念が、従来の研究でしばしば言われていたような、「おのずから」な「偶然」の成り行きを意味するのではなく、むしろ「おのずから」な「自然」に逆らい、目的的必然性の原理に基づいて「みずから」道徳的実践を反復する、その先に開かれる一種の境地であること、第二に、その意味で、九鬼の哲学はむしろカントの道徳哲学と共鳴する側面が多分に認められること、第三に、西田の哲学にもまた、同様の論理を見出し得る可能性があること、これらの点が明らかになったことである。 ただし、上記の研究成果は、当該年度内においては、具体的な論文業績等の形で公表するまでには至らなかった。その主な理由は、第一に、当該年度は、単著『大人の道徳』(7月刊)の刊行を中心に、小中学校における道徳教育の哲学的基盤についての考察、及びそれに付随する講演等の研究成果発表に多くの研究時間を費やしたこと、第二に、前年度に引き続き、「大学改革」をめぐる哲学的考察とその成果発表にも、多くの時間を費やしたこと、第三に、政府関係機関の委員就任に伴い、その業務のために、研究計画立案時には想定できなかった膨大な時間を費やさざるを得なくなったことが挙げられる。 とはいえ、当該年度の研究成果は、道徳教育研究においては、特にカント哲学の日本的受容についての考察に、「大学改革」研究においては、特にPDCAサイクルにおける偶然性の扱い方をめぐる考察に、各々かなり直接的に生かされている。また、すでに、次年度において、講演及び論文の形で発表が予定されており、準備が進められている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
「研究実績の概要」に記した、研究計画立案時には想定できなかった諸理由により、研究は当初計画よりも遅れている。
|
Strategy for Future Research Activity |
まずは当該年度の研究成果を、講演及び論文等の形で公表する。具体的には、九鬼周造と西田幾多郎、及び前年度の主な研究成果であるオギュスタン・ベルクの哲学を総合的に考察する形で、「日本的自然観」についての論考を予定している。それと並行して、従来の研究協力者はもとより、当該年度において新たに繋がりを得た研究協力者からも、哲学研究及び教育学研究の双方について、積極的に専門的知識の提供等を仰ぎ、当該研究の教育哲学的展開の可能性を模索していく。
|
Causes of Carryover |
政府関係機関の委員就任に伴い、当該機関負担による東京出張の機会が大幅に増え、その際に同時に研究会への出席や研究協力者との研究打ち合わせを行うことが多かったため、当初計画よりも旅費を使用しなかった。他方、当初計画よりも多くの物品費、特に書籍費が必要となったため、次年度使用額はそれに使用する計画である。
|
Research Products
(6 results)