2020 Fiscal Year Research-status Report
九鬼周造の歴史哲学から見た「京都学派教育学」―九鬼と西田の比較研究を基礎として
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17K13972
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
古川 雄嗣 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (50758448)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 偶然性 / 歴史哲学 / 多文化主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は前年度に引き続き、道徳教育および市民教育に関する研究およびその成果の公表が研究活動の中心を占めた。主要な業績としては、「共和主義、シティズンシップ、道徳教育―市民には、なぜ、どのような、徳が必要なのか」(道徳教育学フロンティア研究会編『道徳教育はいかにあるべきか―歴史・理論・実践』ミネルヴァ書房、2021年3月刊)、「「重なり合う合意」としての共和主義―シティズンシップ教育のための試論」(『教育学年報12』世織書房、2021年6月刊行予定)、「グローバル・共生社会と道徳教育」(日本道徳教育学会編『新道徳教育全集 第1巻』ミネルヴァ書房、2021年6月刊行予定)が挙げられる。いずれも、近年の政治哲学・政治理論との関連が深い教育哲学研究であり、本研究の主題である九鬼・西田研究との直接的な関係は、現状では明瞭とは言えない。しかしながら、文化や民族の多様性の尊重は九鬼の偶然性や西田の歴史的世界の論理によって哲学的に基礎づけられる理念でもあり、現代政治哲学と京都学派の歴史哲学との比較や架橋は、今後の大きな課題でもある。 なお、九鬼研究および西田研究そのものに関連する研究実績としては、和田博文・山辺春彦編『近現代日本思想史ガイドブック』(平凡社、2021年夏頃刊行予定)における九鬼周造と西田幾多郎の項目の執筆が挙げられる。また、九鬼・西田のほか、鈴木大拙、柳宗悦、阿部次郎の項目も執筆した。特に大きな収穫として、柳の思想における多文化主義的契機の発見がある。柳は九鬼と一才違いの同世代であり、直接の思想的交流はほとんどないが、両者の思想的親和性については、おおいに研究の余地があることが発見された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
前年度に引き続き、某政府関係機関における委員会業務に膨大な時間を割かれ、また当該業務において心理的圧迫を被ったことが、研究の進捗を妨げた最も大きな理由である。加えて、道徳教育・市民教育研究や大学改革研究に関する執筆・講演の依頼が引き続き複数あったことも、九鬼研究・西田研究には十分な時間を割くことができなかった理由の1つである。
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Strategy for Future Research Activity |
道徳教育・市民教育研究として、主にナショナリズム、共和主義、多文化主義を主題とする研究論文の執筆計画がある。また、同じ主題を扱い、一般市民を対象とした単著の執筆計画もあるため、今後はそれが研究活動の中心的な位置を占める。 主に現代政治哲学を対象とするこれらの研究においては、九鬼・西田の哲学との直接的な関連までは迫ることができないかもしれないが、なるべくそれを意識し、見通しを示すところまでも到達したいと考えている。
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Causes of Carryover |
進捗状況の欄に記した理由により、十分な研究時間を確保できなかったため。また、新型コロナウイルスの影響により、研究会等が中止になることが多く、旅費として予定していた額を執行しなかったため。
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Research Products
(2 results)