2019 Fiscal Year Annual Research Report
Levinas's Philosophy of Education in his Confessional Texts: Toward a History of Modern Jewish Educational Thoughts
Project/Area Number |
17K13977
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
平石 晃樹 金沢大学, 学校教育系, 准教授 (00786626)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | レヴィナス / 教育哲学 / 教育思想史 / ユダヤ教育論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、レヴィナスの「宗教的テクスト」における教育思想の解明を目的とするものである。研究最終年度にあたる本年度は、これまでの二年間にわたる研究を総括しつつ、今後のさらに発展的な研究の土台を構築することを主眼に研究を進めた。具体的には以下の諸点に関する研究を行った。 1)フランツ・ローゼンツヴァイクやマルティン・ブーバーといったレヴィナスと関連の深いユダヤ思想家の教育論について読解を進めた。なかでもローゼンツヴァイクについては、時間という制約において生起する思考と他者との本質的な連関や書物の重要性、そして「翻訳」としての「教育」という教育についての根本的な理解などに関して、レヴィナスの教育論と密接な関係があることが明らかになった。 2)近代におけるユダヤ啓蒙主義というより広い背景の中にレヴィナスの教育論を置きなおして再解釈することを試みた。近代ヨーロッパにおけるユダヤ人の解放はヨーロッパのキリスト教的文明への同化の途を開くものであった。ここにヨーロッパの啓蒙思想に範を仰ぐユダヤ啓蒙主義が生まれてくるのだが、レヴィナスの教育論においては、同化を拒否しつつ、さりとて民族主義に邁進するのでもない、いわば第三の途を探り出すことが問題とされている。こうした見立てのもとレヴィナスによるメンデルスゾーン論などを再読することで、彼のユダヤ教育論が拠ってたつ思想史的射程の広さが認識されるに至った。同時に、レヴィナスの教育論は、ヘブライズムとヘレニズム、キリスト教とユダヤ教といった相異なる源泉から生まれたレヴィナスの思想的複雑さを映し出す鏡のひとつとして定位しうることも明確になった。 今年度の研究成果の一端をレヴィナスについての国際シンポジウムにて報告した。
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