2017 Fiscal Year Research-status Report
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17K13978
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Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
竹川 慎哉 愛知教育大学, 教育学部, 准教授 (30513311)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 政治的中立性 / カナダ・オンタリオ州 |
Outline of Annual Research Achievements |
29年度は、カナダ・オンタリオ州における現地調査を通して、教育内容の政治的中立性を担保する教育内容決定システムおよび学校の教育課程づくりの事例分析を行った。具体的には、①州教育省のスタッフへのインタビュー、②学校への訪問(校長への聞き取り、授業観察および授業者への聞き取り)を行った。 ①に関しては、州教育省のStudent Achievement Divisionが開催する現職教育プログラムに参加し、Karen Dobbie氏から聞き取りを行った。②については、トロント大学オンタリオ教育研究所(OISE)附属のThe Laboratory School at the Dr. Eric Jackman Institute of Child Studyの他、Kilbride Public School、St. Joan of Arc Catholic School、Aldergrove Public School、Eglinton Jr. Public Schoolを訪問した。学校でのインタビューは、教育課程編成の際に政治的中立性の観点から留意していること、編成の手順や組織について聞き取りを行った。また、授業者に対し、授業で扱った具体的な教材や教科内容研究の手法について聞き取りを行った。 訪問した5校および教育省スタッフの聞き取りから、オンタリオ州では「社会的正義(social Justice)」をカリキュラムづくりの共通理念に置いていることがわかった。社会的正義の実現という理念は、連邦及び州政府が社会政策の土台においている政治性であるとともに、市民の社会生活レベルでも共有されているものである。そうした社会的合意のある価値規範に基づいてカリキュラムを構想していくことが、政治的に中立な教育であるとの理解が存在していることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
29年度研究計画として挙げていたカナダ・オンタリオ調査を実施し、現地での聞き取りおよび関連資料を収集することができた。オンタリオ州の教育課程政策の現状については、論文としても刊行することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
30年度にはオーストラリア(クイーンズランド州)調査を行う。 ①政策担当者へのインタビューでは、教育内容の政治的中立性を保障するための法制度、基本的な方針について聞き取り、関係資料を収集し、分析する。 ②学校での教師へのインタビューは、学校カリキュラムの管理者(校長やカリキュラム・コーディネーター)に対し、教育課程編成の際に政治的中立性の観点から留意していること、編成の手順や組織について聞き取りを行う。 ③また実際の授業を観察するなかで、授業を構想し、様々な発問を提示する際に政治的中立性の観点からどのような点に配慮しているのか、学習者には教育内容の政治性をめぐってどのような発言や認識の深まりが見られるのかについて教師に聞き取りを行う。また、授業で扱った具体的な教材や教科内容研究の手法について聞き取りを行う。 ④現地の教育課程政策の理論的背景となっている研究者にインタビューを行うとともに、関係する文献を検討する。
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Causes of Carryover |
29年度に当初予定していた英語論文執筆をしなかったため、英語校正などの予算に余剰が生じた。 30年度はオーストラリア調査を予定しているため、その旅費に使用する予定である。
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