2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K13978
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Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
竹川 慎哉 愛知教育大学, 教育学部, 准教授 (30513311)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 批判的リテラシー / カナダ / オーストラリア / カリキュラム / 中立性 |
Outline of Annual Research Achievements |
教育内容の政治的中立性の国際比較分析の論点を抽出するため、「学力の語られ方」を切り口に近年の日本におけるカリキュラム・ポリティクスの分析を試みた。この検討では、グローバルコンピテンシーを背景とした「学力向上」言説、社会階層間格差分析に基づいた「学力格差是正」言説という分析視点を設定し、それぞれに対応した実践動向の問題点を明らかにした。この問題点に対し、学力の内実をポリティカルな視点から問い直す学力保障の立場を提起した。 この論点整理に基づきながら、前年度に引き続き、カナダ・オンタリオ州のカリキュラム改革と教育実践の分析を進めた。オンタリオ州において目指されている学力がどのような性質のものであるかについて近年の政策文書を検討しながら明らかにした。次いで、こうした学力観が州のカリキュラムや教育実践にどのように現れているのかを検討する作業を通して、多様な背景を持つ子どもが共に学ぶ学校での学力形成は何を課題とすべきかを考察した。その結果、オンタリオ州における学力保障の取り組みのポイントは、学校での学習を知識構築のプロセスとして構想すること、そしてもう一つは、そうした探究のプロセスを社会的正義の実現という社会的文脈に埋め込んで展開していくことであることが明らかとなった。以上の研究成果は、木村裕・竹川慎哉編著(2019)『子どもの幸せを実現する学力と学校―オーストラリア・ニュージーランド・カナダ・韓国・中国の「新たな学力」への対応から考える』学事出版として刊行することができた。 もうひとつの分析対象であるオーストラリアについては、現地調査を実施できなかったものの、入手できる資料を基に、ナショナル・カリキュラム実施以降の教育内容決定の仕組みについての政治的分析を行った。この成果は、青木麻衣子・佐藤博志編著(2020)『オーストラリア・ニュージーランドの教育(第三版)』東信堂の一部として刊行した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度実施予定であったオーストラリアの現地調査を実施できなかったものの、共同研究という形でオーストラリア、カナダ、ニュージーランド、中国、韓国の比較研究を共著(編著者)として刊行することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
現地調査に向けて、現在のオーストラリアにおけるナショナル・カリキュラムをめぐる論点整理を行う。現地調査においては、(1)政策レベルの教育課程立案担当部署のスタッフへのインタビュー、(2)学校での教師へのインタビュー、(3)現地教室での授業分析、(4)大学の研究者へのインタビューを行う。これまでの研究を総括し、政治的中立性を担保する教育課程編成の原理を抽出する。
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Causes of Carryover |
予定していたオーストラリアでの調査が実施できなかった。 今年度は、現地調査と学会発表を行う予定であり、繰り越し分はこれに充てる。
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