2021 Fiscal Year Annual Research Report
International comperative study on political neutrality of educational contents
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17K13978
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Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
竹川 慎哉 愛知教育大学, 教育学部, 准教授 (30513311)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 批判的リテラシー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、教育内容の政治的中立性が海外においてどのように理解されているのか、また教育内容の政治的中立性を維持するためにどのような制度設計がなされ、学校での教育課程や授業づくりがなされているのかについて、オーストラリア、カナダの2カ国を比較分析することで、現在の日本の学校教育において政治的中立性を維持するための具体的モデルを提案することにある。 オーストラリア調査は、海外渡航が困難な状況のため再び断念せざるをえなかった。代わって、本年度は、オーストラリアにおける批判的リテラシー教育の最新状況を文献調査し、この翻訳書出版に向けた基礎的作業を進めた。 本研究全体の成果としては、以下のようなことが明らかとなった。 まず、政治性の捉え方においては、子どもたちが生きる生活、世界そのものが多面的に政治的であることを前提にその政治性のバランスの原理として「公正」や「平等」の理念が設定されている。そうした認識に基づき、学校の教育内容においては、どの内容が政治的に中立かを考えるのではなく、ものごとの多面性、論争性を認識することを課題とし、それを教育内容の中立性を担保するシステムを構築している。 こうした教育内容の政治的中立性の捉え方は、権力関係のバランス問題にとどまるものではない。多文化、多言語的背景が肯定的に学校教育の諸活動に位置づけられていることで、そうした背景を持つ子どもたちも自らの社会経済的、文化的背景を土台に授業に参加し、学力形成に成功することにつながっている。さらに、学校において何を公的な知識・技能として教え-学ぶかをめぐる教育内容の政治的対立を解消し、公正で質の高い教育に繋がっていることが明らかとなった。
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