2017 Fiscal Year Research-status Report
近世教育メディア史における「無料」の価値―「施印」に着目して
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17K13981
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 施印 / 出版文化 / 無料 / メディア / 河瀬友山 / 清水堂 / 孝学堂 / 教化 |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年度における研究成果は、以下のように調査と研究に分けられる。 調査面においては、大阪府立中之島図書館(枚記号)と刈谷市中央図書館(佐藤コレクション、村上文庫)に所蔵されている瓦版を調査し、その中に合計3点の施印が「潜り込んでいた」ことが判明した。さらに、山名新聞歴史資料館の瓦版目録を入手し、ここにも施印3点が確認できた。また、河瀬友山の著書に関して、「日本古典籍総合目録データベース」所収のものをはるかに上回り、異版も含めて全50点も収集し、確認済みである。 研究面においては、河瀬友山の著書『孝連人物考』5種と、施印「孝連ケ条」3種の検討を通して、以下のことを明らかにした。第一に、友山の出版活動全体が水火天満宮を拠点にしたという通説とは異なり、彼が以前にも、美濃在住中に講釈・出版活動を開始し、水火天満宮と関係なく、社会教育者として成功を収めていたこと。第二に、美濃在住中の活動の拠点が、「孝連」という「講連」にもじった組織を拠点にしていたこと。第三に、『孝連人物考』各異版における人物の順序は、「孝連」メンバーが、出版資金の特権として自分で決めることができたようであるということ。第四に、『孝連人物考』の増加版の出版は、友山にとって、美濃在住中の活動の集大成でもあり、今後活動が続けられるかどうかに関する不安も表していたと考えられること。 以上のことを論証する、『孝連人物考』の分析と翻刻を合わせた論考が学術雑誌に掲載決定され、2018年度に公表される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
事情により、2017年度に予定していた岩瀬文庫の施印調査は残念ながら果たせなかったため、調査の面はやや遅れている。一方、事例研究においては、『孝連人物考』異版5種の発見によって、「孝連」の活動が一層はっきりと見えてきたため、予想以上な結果が得られた。二つの面を合わせて、研究計画全体はおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度には、施印調査を継続するとともに、事例研究として三つの課題に取り組みたい。第一に、手元にある史料を整理し、河瀬友山が京都に移動してからの出版活動に関する論文の執筆。第二に、石門心学の施印目録の作製。第三、心学書の挿絵を調査し、施印受容の検討。
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