2018 Fiscal Year Research-status Report
戦後日本の里親研究-里親養育に関する知の受容と里親による養育実践に着眼して
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17K13989
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
田中 友佳子 (田中友佳子) 九州大学, 人間環境学研究院, 学術協力研究員 (70707174)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 里親家庭 / 里親会 / 特殊里親 / 引揚孤児 / 社会的養育 / GHQ/SCAP文書 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度には、(時期B)登録里親数が横ばいとなり、委託率が減少に転じる時期を主な研究対象とし、課題1と課題2の解明に取り組むこととした。 〔課題1〕里親の養育実態について(①里親が発行した資料の発掘と分析/②インタビュー調査) 平成29年度に続いて、県里親会や全国里親会に対する資料発掘とインタビュー調査を行った。秋田県北秋田市七日市での里子経験者へのインタビュー調査、千葉県の房総双葉会所蔵資料の保存作業などを行った。また、日本で初めて県単位の里親会を発足させたといわれる鳥取県里親会と、天理教里親連盟の立ちあげにも関わった人物に関する調査、引揚孤児の経験を持つ方へのインタビュー調査を行うことができた。また、本年度は、日本フォスターケア研究会で研究発表を行い、社会的養育を考える九大研究会を開催するなど、研究発表を積極的に行った。加えて、東北地区里親研修会の講演や「里親だより」の連載が決まるなど、一般の方々に里親養育の歴史を伝える場を作ることができた。 〔課題2〕教育学、児童心理学、児童福祉学の専門家や児童精神科医による里親研究の分析→連合国軍占領下PHWに関する資料の発掘 課題2「教育学、児童心理学、児童福祉学の専門家や児童精神科医による里親研究の分析」に関しては、平成29年度に前倒しで調査を行った。したがって本年度は、前年度に実施できなかった「連合国軍占領下PHWに関する資料の発掘」を進めた。公衆衛生福祉局(PHW)や民事局(CAS)の里親制度・里親養育に関する資料を、国立国会図書館憲政資料室において収集した。厚生省児童局から県に宛てられた「児童福祉法」に関する文書、家庭養育に関する翻訳資料、富山県の里親委託関連資料などを、閲覧複写することができた。里親制度が中央と地方の間でいかに伝達され報告されたのか、その一旦を明らかにする資料であり、現在分析を進めているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に示したとおり、全国里親会や各地の里親会の史料収集については順調に進んでいる。また、昨年度実施することのできなかったPHW・CASに関する史料の発掘と分析を、本年度は進めることができた。研究会や学会などの研究発表の場に加え、一般の方々への周知の場も持つことができている。このように調査研究とその公開は順調に進展しているものの、研究代表者の養育事由のため年度末は遠方への出張を控え、来年度に研究費を繰り越すこととなった。以上の理由から、「おおむね順調に進展」という評価とさせていただいた。
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Strategy for Future Research Activity |
〔方策1〕戦後の里親会・里親養育に関する資料収集、インタビュー調査の実施:引き続き各地の里親会などに働きかけ、資料収集やインタビュー調査を行うとともに、GHQ/SCAP文書をはじめ占領軍・アメリカ側の資料の収集を行う。 〔方策2〕戦前・戦中の孤児養育に関する研究の推進:本研究を進めるにつれ、戦前・戦中から戦後への、里親慣習・仕組みの繋がりに関する研究の必要性を強く感じるに至った。今後の研究課題として、東京養育院をはじめ戦前の孤児院における院外家庭委託の仕組みをめぐる状況を、家族史・社会史的側面や子どもの労働の視点から明らかにしていきたいと考えている。 〔方策3〕研究成果の公表:これまで収集した資料やインタビューをもとに学術発表を行うことに加え、会誌への投稿や研修会などを通じて里親関係者や一般の方々への周知に努める。
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Causes of Carryover |
研究代表者の子の養育事由(妊娠出産)により、予定していた平成30年度中の史料収集が困難となった。そのため、平成30年度に予定していた研究活動を平成31年度に延長し、調査を継続して行う予定である。
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Research Products
(4 results)