2019 Fiscal Year Research-status Report
イングランドにおける公立学校の民営化の動態と日本への示唆
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17K14001
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Research Institution | Daito Bunka University |
Principal Investigator |
仲田 康一 大東文化大学, 文学部, 准教授 (40634960)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | アカデミー / 学校の民営化 / イングランド / ガバナンス / スタンダード |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、昨年度に引き続き、英国(イングランド)における学校運営の民営化の動態について、具体的な事例を紐解きながら、その到達点と課題を明らかにする作業を行った。2018年に日本にお迎えし研究会・講演会を行った現地研究者との連携を引き続き深めながら、英国で模範例として取り上げられながらも、その実態については多くの課題が指摘されている学校について同氏が行った研究の分析を進めた。特に、同氏が行った実証研究をまとめた本の邦訳を完成させ、英国と日本の教育政策との対比・類比の中で、その意義や位置を解説した。 その際に、特に焦点化して検討した第一の点は、政策を正当化する言説やレトリックが、実践や人々の認識とどのような関係性を持っているかということである。「向上心aspiration」や「効果のある学校」の言説が、教師の過大な尽力や、校長による過剰なヘッドシップを正当化するとともに、有色人種の多い周辺地域に、向上心の欠如といった「問題」を見出し、ひいては地域文化を「危険視することdemonetization」といった差別問題に接続することが確認された。このことについては、植民地主義やレイシズム、そしてそれを扱ったカルチュラル・スタディーズの文献などから多くを吸収した。 第二に、また、NPMという行政改革の論理や、新自由主義などの政治思想が学校制度改革にどのような関係性を持っているのかについて文献研究を進めた。 また、学校民営化に関する英国内で行われた実証研究などを収集、整理し、その内容について検討をすすめている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
渡英する予定があったが、英国の総選挙やブレクジットなど、学校教育を含む社会政策に影響を与えうる大きな情勢変動があったことから、渡英を控えたが、英国の研究者との交流の中で、最新の知見の導入が可能となっていることから、この評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、2018年に日本にお迎えし研究会・講演会を行った現地研究者との連携を引き続き深める。英国で模範例として取り上げられながらも、その実態については多くの課題が指摘されている学校について同氏が行った研究の分析を進め、図書の全訳を行った。今年度は、日本の教育政策への示唆などについて十分な分析を加えた上で、同訳を刊行したい。また第二に、新型コロナウイルス感染症の状況を踏まえ、渡英による調査の可能性を模索しつつ、不可能な場合においても、現地実践家や研究者と、web会議等によるコミュニケーションを試み、研究目的の達成に近づけるため最大限の努力を行う。
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Causes of Carryover |
渡英の予定があったが、総選挙、ブレクジットなどにより多くの社会変動があり、他の要因の交絡が多くなりすぎて本研究目的に特化した聞き取り等が行いにくいと考えたため、見合わせた。そのことにより余剰が生じた。これらについては、新型コロナウイルス感染症対策を踏まえながらではあるが、渡英による現地調査の可能性を探る。
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