2020 Fiscal Year Annual Research Report
Making sense of private sector entrance into public education in England and its implications for Japanese education system
Project/Area Number |
17K14001
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Research Institution | Daito Bunka University |
Principal Investigator |
仲田 康一 大東文化大学, 文学部, 准教授 (40634960)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | イングランド / 英国 / 公設民営学校 / アカデミー / 人種 / 階級 / 学力 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、イングランドにおける学校運営の新しい様式、すなわち、公財政によって負担され、民間団体等によって経営される、独立運営の学校制度の動態について分析を行うとともに、その動態から、日本の学校制度改革論議に対していかなる示唆が得られるかを考察することを企画した。同制度は、アカデミーと呼ばれ、英国の中等教育段階の学校の大多数を示すに至っている。本研究では、アカデミーの中でも、特に改革の代表例と言われるような顕著な事例に焦点を当て、その事実の上に、効果を分析することを目的とした。 第一に明らかにされたのは、同制度が、戦後イングランドにおける公教育制度の再編の延長上にあることである。地方当局からの離脱と中央集権、学力等の成果を重視した査察、学校の社会経済的背景を「言い訳」とさせないような制度配置がその例であり、これらの結果として、財政と学力におけるアカウンタビリティのみを追求する学校運営が成立したと言える。 第二に、顕著な成功例とされる学校についての再評価を行った。学校としては、労働者階級や人種的なマイノリティが多く、困難地域とされていたが、例外的成功をしたとされる学校である。ただし、同校に関する種々の研究を総合した再評価を行い、制度的人種差別や学校内でのストリーミングがあること、それに伴い、大学進学予備課程(sixth form)入学時に、マイノリティが排除されやすく、逆にそのタイミングで、有力進学校とみなされる同校の評判に惹きつけられた白人中産階級生徒が入学し、それが大学進学実績を構成している可能性があることなどが明らかとなった。 これらを通じて、「学力」という成果に駆動されていることにより、一見して「自由」な学校運営の中に、社会的な矛盾が潜在化しうる可能性を指摘した。
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