2018 Fiscal Year Research-status Report
インクルーシブ授業におけるカリキュラム・デザイン方法の開発的研究
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17K14003
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Research Institution | Gifu Keizai University |
Principal Investigator |
田中 紀子 岐阜経済大学, 経営学部, 講師 (90735276)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | インクルーシブ教育 / カリキュラム / ドイツ |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30(2018)年度は、ドイツにおける知的障害児と定型発達児の共同的な授業とそれを支えるカリキュラム構成について、理論と実践の両面から研究を進めた。 (1)理論について:ドイツ教育学におけるインクルーシブ教育の理論形成過程を捉えるために、ドイツでインクルーシブ教育のあり方が検討される際に手がかりとされた「多様性の教育学」の内容とその特徴について文献調査およびインタビュー調査を通して検討し、整理した。その上で、「多様性の教育学」に基づくカリキュラム構想の理論、および授業構想の理論について検討した。その結果、「多様性の教育学」は伝統的な学校教育を批判し変革の必要性を主張している点でインクルーシブ教育と共通していることが明らかになった。具体的には、大人が決めたカリキュラムの実施や評価方法に対する子どもからの意見も含めた批判的検討を目指す取り組み等があった。 (2)学校教育実践について:ベルリンのインクルーシブ重点校に指定されている学校を訪問し、障害児と定型発達児の共同学習の授業を参観したのち、校長および授業者(教諭、補助教員等)にインタビュー調査を行った。訪問した学校の特徴として、異年齢学級での授業や子どもの実態に応じて特定の子どもを取り出した学習支援が行われていた。訪問した学校では、インクルーシブ重点校に指定される以前から異年齢学級での授業を行ってきた長年の経験があるため、①保護者や子どもは年齢や学習水準が異なる子どもが共に学ぶことに対して抵抗感を抱いていないこと、②教師は「子どもが共同して取り組む課題」と「個人の学習水準に合わせた課題」とを使い分けて学習時間の確保および評価を行っており、数値による評価だけでなく、子どもの学習の評価を文章で記入し話し合いによって共有する体制があること等を明らかにすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、文献による調査に加えて、ドイツでの調査を行った。ベルリンのインクルーシブ教育重点校である小学校を訪問し、障害児を含む異学年学級の授業を参観するとともに、学校の教職員に聴き取りを行うことで、インクルーシブ授業の事例についてデータを収集することができた。また、ドイツにおけるインクルーシブ教育の理論形成に影響を与えた研究者を訪問し、理論構築の経緯や時代的背景等についてインタビュー調査を行うことができた。 ただし、調査時期が年度末となったため、授業や学校の取り組みに関する詳細な分析・検討および成果の発表は、次年度(平成31(2019)年度)以降に行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31(2019)年度は、(1)平成30(2018)年度にドイツで行った調査結果に基づいて初等教育段階におけるインクルーシブ授業のカリキュラム編成の理論と事例について分析・検討し、(2)日本の学校教育におけるインクルーシブ授業のためのカリキュラム編成の課題について検討する予定である。
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Causes of Carryover |
今年度行ったドイツでの調査および資料収集では、研究計画を作成した当初の予定に加えて、研究者による調査への協力が得られたため滞在期間等を延長した。それに伴い、調査のために必要な費用を確保する目的で次年度の予算を前倒して申請した。渡航中の滞在地域や日程等を調整した結果、節減できた費用は次年度に繰り越すこととなった。 繰り越した費用は、次年度以降に資料収集および調査研究のための旅費、文献収集のための物品費等として使用する予定である。
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