2018 Fiscal Year Research-status Report
アメリカにおける市民性教育の格差是正に向けた制度的・政策的支援の研究
Project/Area Number |
17K14010
|
Research Institution | Osaka International College |
Principal Investigator |
古田 雄一 大阪国際大学短期大学部, その他部局等, 講師 (20791958)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 市民性教育 / アメリカ / 教育政策 / 教育制度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、市民性教育の格差是正への政策的・制度的支援の取り組みとして特に先駆的と考えられる、イリノイ州および同州シカゴ学区(教育委員会)の事例に注目し、4~5月に実地調査を行い、研究を進めた。教育委員会関係者へのインタビュー、学校視察と教員・管理職へのインタビュー、各種資料収集等を通じて、同州・学区の取り組みの全容や特徴、また学校現場における実態等を把握することができた。 従来アメリカの市民性教育は、州や連邦政府レベルで統合的に推進されるというより、各学校・学区等に推進が委ねられ、それが市民性教育の格差の一因ともなってきた。こうした中イリノイ州は、公民科において、あらゆる学校に効果的な実践を普及すべく積極的な支援を行っている。先行研究では、公民科の履修だけでは生徒の市民的知識・技能の向上や政治・社会参加の促進効果が認められない一方、時事的・現代的問題の議論やサービス・ラーニング等を含むことで効果がみられ、特に低所得層の子どもへの効果や家庭や地域の負の影響を超克する効果が認められており、このように州レベルで内容・方法にまで踏み込んで推進するアプローチは、格差是正に一定の有効性をもつと考えられる。 他方シカゴ学区では、特定の教科や実践のみに閉ざすことなく、学校内外の関係者の参加を促し、学校全体での取り組みを後押ししていた。市民性をめぐる格差は、公民科のみならず様々な市民性教育の機会不足、非民主的な学校環境など複合的な要因によるため、こうした学校全体の変革を目指すアプローチもまた重要である。 これらの研究成果は、日本教育行政学会大会で発表したほか、シカゴ学区の取り組みについて、次年度の論文化に向けて執筆を進めた。加えて、イリノイ州における認証評価を通じた学校全体での市民性教育推進の取り組みについても研究を進めており、次年度にその成果を発表予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、イリノイ州および同州シカゴ学区の事例について、実地調査を実現することができ、これらの取り組みについて有益な情報収集ができた。その成果の一部は、学会発表(10月)で発表することができ、また次年度の論文投稿および学会発表に向けて十分な材料を得ることができた。 なお、当初は、イリノイ州と別の州の比較分析も検討していたが、同州およびシカゴ学区では、複数のアプローチで市民性教育の格差是正に取り組んでおり、単一州・地域の事例分析を深めることで、当初の研究目的を達成できると考え、分析対象について若干の変更を行っている。
|
Strategy for Future Research Activity |
まず、イリノイ州における認証評価を通じた学校全体での市民性教育推進の取り組みについて、6月に学会発表を行うとともに(日本教育経営学会)、論文投稿を検討する。また、前年度の成果を踏まえ、シカゴ学区における市民性教育改革についても現在論文をまとめており、今年度投稿予定である。
|
Causes of Carryover |
研究を進める中で、調査対象州を2つから1つに絞り、州間の比較研究から、同一州内の複数の事例の比較研究にアプローチを変更した。この関係で、旅費等の調査費用が当初の予定よりも抑えられている。一方で、アプローチを変更したことに伴う追加の資料収集が必要となっていることから、現時点での残余分はこのために使用したい。
|