2017 Fiscal Year Research-status Report
A research study of the school as a performing arts community of practice
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17K14013
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Research Institution | Okinawa Prefectural University of Arts |
Principal Investigator |
呉屋 淳子 沖縄県立芸術大学, 音楽学部, 准教授 (10634199)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 学校芸能 / 民俗芸能 / 学校 / 神楽 |
Outline of Annual Research Achievements |
今日消滅ないし著しい変容をみせている現代の民俗芸能は、学校と地域が密接に関わりながら新たに創造されている。しかし、それらは必ずしも地縁や血縁、出自など共同体的な紐帯を基盤としたコミュニティではなく、近代化やグローバル化、災害など、生活の都合に応じてさまざまな境界をもった脱領域化されたコミュニティのなかで生み出されている。 初年度は、文化的アイデンティティが複雑に交錯する場としての学校に着目し、学校と地域の相互行為を通して創造される民俗芸能を考察に据えながら、民俗芸能の継承をめぐる議論をより発展的な視点から検討した。具体的には、民俗芸能を学校教育を通して「持続」させていくための取り組みは、文化的伝統の正統性と被災地の現実的問題が混在する日常のなかで、帰属性を問わない学校と地域の関わりのなかで行われていた。 また、東日本大震災で被災した宮城県山元町の小学校で行われている「子ども神楽」の実践に着目し、現代を生きる人々がどのように民俗芸能を認識し、受け継ごうとするのかという現代的なテーマを中心に取り組みを行った。山元町立坂元小学校を中心に調査を進めてきたが、山元町内の4箇所の小学校では、学校と地域の相互行為を通して民俗芸能を創造しているという状況があると同時に、帰属性を異にする人びとが民俗芸能を創造する実践を通して新たにコミュニティを生成していることが明らかになった。また、震災前に地域で育まれてきた民俗芸能ではなく、他地域の民俗芸能を取り入れるなど、震災前後を比較してみても取り組んでいる民俗芸能に変化が見られた。 学校という場において実践される民俗芸能の取り組みは、そこに関わる人びと(学校関係者、神楽保存会)によって、それぞれの活動の文脈の中で意味付けがなされ、価値付けされている。その意味付けや価値付けの行為自体が、学校で民俗芸能を実践可能なものにしていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた学校の教員の異動や退職に伴い、初年度の調査計画に変更があったが、文献調査を充実させながら、関係者に聞き取り調査を遂行した。 新聞記事等の文献資料が不足しているため、直接、学校や神楽保存会、教育委員会の関係者に資料提供を依頼しながら、不足部分を補う必要がある。 被災地関連の学校教育の資料の収集は、順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、民俗芸能の実践を真正な(authentic)文化現象としてのみ捉えるのではなく、学校と地域の相互行為から生成した新しい文化として捉えることによって、学校と地域社会との関係を読み解き、学校という場がもつ多様な機能と役割から、民俗芸能が創造されながら継承される様相について検討していく。 現段階では、2018年8月に沖縄県伊江村の教育委員会と共同で主催する「持続可能な民俗芸能はどうやって生まれるのだろうか」(仮)をテーマに、山元町立坂元小学校の関係者、中浜神楽、坂元神楽保存会の方々と伊江村無形民俗文化財「村踊り」の担い手の方々、伊江小学校、西小学校の関係者が交流しながら、議論するシンポジウムを企画している。 聞き取りや参与観察は、初年度に引き続き行う予定である。
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Causes of Carryover |
次年度に予定しているシンポジウムに可能な限り予算を充てたいため、少額ではあるが予算を繰り越して使用する予定。
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Research Products
(1 results)