2017 Fiscal Year Research-status Report
サステイナビリティ学の教育課題としての高齢社会:演習教育のアクションリサーチ
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17K14014
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
工藤 尚悟 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 助教 (20755798)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | サステナビリティ学 / 高齢社会 / 地域づくり / 演習教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本が世界に先駆けて経験している高齢社会を、社会の持続可能性に取り組むサステイナビリティ学における重要な教育課題として位置付け、これをテーマとする演習教育の実践とその評価を行うことを目的とする。演習教育のデザインと実施をアクションリサーチとして実施し、この過程に地域住民の参加を得ることで協働型研究プロジェクトとして展開している。今年度は研究計画に従い、①演習教育のデザイン、②演習教育の実施、の2点を行った。①に関しては、対象地域である秋田県の複数自治体において、社会起業家や地域づくりに従事する方々に対してヒアリング調査を行い、注目しているテーマ、活動のなかでの課題、事業・活動を通じての地域へのインパクトについて把握した。このなかで、秋田県五城目町と鹿角市において、よりソーシャル/コミュニティ・ビジネスを志向する複数の個人が、住民を巻き込みながらの地域づくり活動を仕事として立ち上げ、法人化を進める動きが顕著であることが確認された。全国的に行政主導の地域づくりが見られるが、これらの自治体においては異なる動きが見られた。このこと注目し、「なぜこれらの地域ではよりソーシャル/コミュニティ・ビジネスに根ざした地域づくりが展開されているのか」をリサーチクエスチョンとして設定した演習教育を実施した。演習には8名の学生が参加し、合計24名の個人・団体にインタビュー調査を行った。調査の結果より、事業・活動に取り組む個人の経験に基づいた強い動機と伴に、①地域の持つ資源・特性(自然環境、歴史・文化的資源)、②活動に必要となるハードインフラ(オフィスやネット環境)とソフトインフラ(情報交換のネットワーク)、③ソーシャル/コミュニティよりの活動に対する地域の受容性、が彼らの活動を地域に根付かせるために重要であることがわかった。演習期間中にこれらの内容を共有する報告会を現地にて実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究はおおむね順調に進展しており、本年度に計画した演習教育のデザインから実施までを、ソーシャル/コミュニティ・ビジネスを行っている起業家や地域づくりに従事している個人・団体からのインプットを得ながら実施することができた。社会の高齢化は従来のサステナビリティ課題である環境と人間の関係性に関するものと異なり、縮小しながら高齢化する社会において「どのような社会価値を次の世代につないでいくのか」という価値規範に関する問いを投げかけている。このようなテーマを中心に据えた演習教育はこれまでのサステナビリティ学教育のなかにはなく、新しい演習教育のあり方を示すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度についても研究計画に従って地域づくりに取り組む人々と協働しながら進めていく。本研究では、演習という一般には学生向けのトレーニングとしてのみ存在する教育活動を学術の外に開き、現場にて実際に地域に向き合いながら事業・活動を展開しているプレーヤーからの助言を積極的に取り込む設計となっている。次年度は本事業における2回目の演習を実施し、年度後半にその評価を行う。この際に地域側から事業に参加して頂く方々からの評価を取り入れることに務める。多くの演習教育は地域側の協力を得て学生を鍛えることで終わってしまうが、このことによる地域側の負担は大きく、複数年実施すると地域側にストレスが蓄積してしまうことが多い。教育を実施する側の者と演習を受け入れる地域の方々との関係性が、学生を鍛えるという活動を通じて方向性を向くものとなり、最終的には地域側にも意味のある学びの機会となるような関係性に転換していくことを目指す。
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Causes of Carryover |
今年度の演習を年度末に実施したことにより、経費について後日反映されたものがあり差額が発生した。この差額については次年度の演習実施の際に使用することとする。また演習を9月に実施することで反映にかかる日数による差額発生をさけるよう務める。
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Research Products
(2 results)