2018 Fiscal Year Research-status Report
新任教師がもつ生徒指導におけるジェンダー観の構築・変容過程
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17K14020
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Research Institution | Miyazaki Municipal University |
Principal Investigator |
寺町 晋哉 宮崎公立大学, 人文学部, 助教 (10775729)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 新任教師 / 生徒指導 / ジェンダー / 学級運営 / 新任教師の困難 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、新任教師(大学四年生時含む)へのインタビュー調査を行うことによって、教師のもつ生徒指導におけるジェンダー観の構築及び変容過程を明らかに することを目的としている。平成30年度は、平成29年度から行なっているインタビュー調査の継続実施及び新たにインタビュー対象者を選定し、調査を行なった。また、『月間生徒指導』のタイトル分析を行なった。 第1のインタビュー調査の継続実施について、平成29年度に調査を行なった9名のうち、8名に継続して調査を行なった。継続調査は7-8月に8名に調査を行い、そのうちの2名は3月にも再度調査を行なった。7-8月の調査では、新任教師として1学期を終えたばかりの時期であることから、「1学期をふりかえった感想」、「困難だったこと」、「想定以上にやれたこと」、「二学期以降の課題と目標」について聞き取りを行なった。2-3月調査では、新任教師として一年を終える時期だったので、先と同様の内容を1年間全体をふりかえって聞き取りを行なった。また、平成29年度調査でとらえきれなかった部分を補完するために、新たに4名の大学4年生にインタビュー調査を行なった。 第2の『月間生徒指導』のタイトル分析では、『月刊生徒指導』の1971年から2018年11月までの記事タイトルを対象にしている。ジェンダーの視点から得た知見では、『月刊生徒指導』において、「女」と「男」をテーマにしたものが多数存在し、両者を区別して論じながら、「女」が多く語られていることが明らかになった。男女問わず問題視されている「非行」「いじめ」などのテーマも、わざわざ「女子」を冠にしたタイトルを設けている記事も存在する。「女」を別にして語るということは、「男」を語るものとの間に、なんらかの相違点が存在する可能性があると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
インタビュー調査に関して、事前の計画通りに進行している。当初の計画では、教師としての初年度に二度インタビュー調査を行う予定であったが、2名のみの実施となった。これは対象となった教師たちが年度末に多忙であり、日程調整等が難航したためである。インタビューを実施できなかった教師たちから、五月の連休時や夏の長期休暇であれば対応可能という連絡をもらっている。年度末に予定していた調査は今後、協力者の都合に応じて適宜日程を調整し、継続した調査が行えるようにしている。 また、教師のジェンダー観の変容を明らかにする予定であったが、新任教師へのインタビュー調査から、新たな研究課題も生まれた。それは、新任教師特有の困難や多忙である。具体的には、新任教師たちの想定以上に授業準備の時間が取られること、部活動指導等により長時間の労働時間に全てが新しい業務であることの多忙などである。今後は、この点についても関心を持ちながら調査を行なっていく予定である。 次に、『月刊生徒指導』の分析は、膨大な資料データの整理を効率よく行い、タイトル分析を行うことができた。タイトル分析を行うことで、『月刊生徒指導』の全体像を把握することが可能となった。また、上述したように、タイトルだけでもジェンダーの視点から興味深い知見を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
インタビュー調査は継続して実施する。まず、平成31年度に2年目教師として働くインタビュー協力者には、5月の連休及び夏の長期期間中に2回目のインタビューを実施する予定である。既に、調査依頼は行なっている。また、平成30年度末にインタビュー調査を実施できた2名に関しては、引き続き平成31年度末に3回目のインタビュー調査を行う予定である。聞き取りの内容は、2回目の調査に関しては、新任教師としての1年間の経験についてである。その中で、生徒指導観の変容や学級運営の課題等について聞き取っていく。3回目の調査に関しては、教師としての2年目の経験について、これまでの調査同様に聞き取りを行なっていく。 平成31年度に新任教師となる協力者には、平成30年度同様に、夏の長期休暇期間に1回目のインタビュー調査を行う予定である。聞き取り内容に関しては、平成30年度と同様の予定である。 『月刊生徒指導』の分析は、実際の記事内容を分析していく。タイトル分析で明らかになったように、男女を区別して生徒指導を行なっている可能性が示唆された。そこで、記事タイトルにジェンダーの要素が含まれたものを抽出し(例えば、タイトルに「女」が含まれているもの)、そこで語られるジェンダーについて詳しく分析を行なっていく予定である。
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Causes of Carryover |
当初の予定よりインタビュー調査協力者の人数が若干名減ったことで、謝礼金額が減額した。それに伴い、インタビュー・データ数も減ったため、データの文字起こしに想定していたアルバイト代が減額している。また、新任教師へ年度末に行う予定であったインタビュー調査の実施が次年度に変更となったため、データの文字起こしのアルバイト代が当初の予定より減額している。 インタビュー調査が変更になったため、そのデータの文字起こしのアルバイト代に使用する。また、当初の研究課題の進捗を損なわない範囲で、新任教師に対する新たな研究関心と当初の研究課題を連結することが可能であるかを探索する上での文献資料に使用する。
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