2017 Fiscal Year Research-status Report
発達障害支援をめぐる相互行為研究:教育的支援の構成的特質に着目して
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17K14023
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Research Institution | Soka University |
Principal Investigator |
鶴田 真紀 創価大学, 教育学部, 准教授 (60554269)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 発達障害の社会的構成 / 学校的社会化 / 子どもらしさ / 逸脱 / 相互行為研究 / 映像データ分析 / インタビュー / エスノグラフィー |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度の研究実施計画に基づき、まず理論的研究に関しては、隣接領域(社会学、障害学、医療人類学、特別支援教育学)における障害(児)研究の研究動向の把握に努め、「障害」や「支援」に関連する概念の理論的整理を進めた。特に、本年度は(1)特別支援教育の政策的展開を整理し、(2)障害学や社会構築主義、エスノメソドロジー等の理論と本研究との関連性を提示すると同時に、(3)本研究において採用する質的調査法(映像データ分析、インタビュー、エスノグラフィー)の方法論的検討を実施した。これらの理論的研究の成果の一部は、すでに実証的研究において生かされているが、本年度以降の研究を推進していく上での基盤となるものである。 次に実証的研究に関しては、これまで蓄積してきた各種のデータ(映像データ、インタビューデータ、フィールドノート)を利用し、意欲的に研究を実施した。いずれも個別の研究成果が刊行されるのは来年度に入ってからであるが、具体的には、(1)「学校的社会化」という観点から、小学校における初期的社会化研究のあり様を検討した。次に、(2)「子どもらしさ」という規範性が「発達障害のある子ども」にどのように関わっているかを示した。さらに、(3)として映像データ分析とエスノグラフィーを中心に、障害児教育場面を検討し、相互行為において「障害」がどのように構成され、「支援」という概念の構成特質に迫った。これらの研究を実施すると同時に、本研究が開始される以前に実施していた調査によって収取されたデータを整理する中で、新たに追加調査を実施する必要性を感じている。平成30年度以降の調査の再開に向けて、その準備を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究が「おおむね順調に進展している」理由としては、平成29年度は実証的研究を意欲的に行い「成果」として産出できたことが挙げられる。それのみでなく、調査を再開する必要性を感じるほどに、研究関心の拡大に向かうことができたことは本年度の研究課題が順調に進展している「証拠」であるように思う。しかしながら、「研究実績の概要」において述べたように、実証的研究の主たる「成果」が刊行できるのが、全て本年度内ではなく来年度である。また、理論的研究に関しては、社会学的方法論の検討を通して、一定の到達点には達することができたとは考えているものの、支援概念に関する理論的文・概念的整理等はまだ不十分であると考えている。これらの理由から、「当初の計画以上」ではないものの、全体的には「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も基本的には、平成29年度を踏襲し、理論的研究と実証的研究とのそれぞれについて研究を進めていく予定である。 理論的研究に関しては、現在着手している「能力(無能力性)」と「訓練(教育)」との関係性についての各種論文を整理し、支援概念を検討につなげたい。実証的研究に関しては、蓄積データの再分析を行うと同時に、関係者と連携を取りながら調査の再開を目指したいと考えている。
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Causes of Carryover |
平成30年度以降に調査の再開を予定しているため、平成30年度の助成金と合わせて調査に必要な機材の購入や調査データの文字起こし等の一部として使用する予定である。
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[Book] 教育社会学事典2018
Author(s)
教育社会学事典編集委員会(分担執筆)鶴田真紀
Total Pages
896
Publisher
丸善出版
ISBN
978-4-621-30233-0