2017 Fiscal Year Research-status Report
Facilitating students' problem solving and posing by focusing on argumentative processes of planning proofs
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17K14033
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
辻山 洋介 千葉大学, 教育学部, 准教授 (10637440)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 数学教育 / 証明の構想 / 証明の構成 / 問題設定 / argumentation / 教材研究 / 蓋然性 / 問題解決 |
Outline of Annual Research Achievements |
証明学習において,生徒が自立的・協働的に証明問題の解決・設定に取り組む活動の重要性が指摘されているが,学習指導の具体的な指針はいまだ明らかではない。この指針の解明を見据え,本研究は,証明の構想における議論(argumentation)に焦点を当て,その議論を証明の構成(問題解決)にいかす活動,及び新たな問題の発見(問題設定)にいかす活動を促進するための教材及び指導法を考案することを目的としている。 この目的に対し,平成29年度は,交付申請書に記載の研究実施計画の通り,関連文献の精読,及び申請者の過去の関連研究課題における授業データの再分析をもとに,証明の構想に基づく問題解決・問題設定を促進する教材及び指導法を暫定的に立案した。 具体的には,まず,科学哲学者トゥールミンの議論研究(Toulmin,1958/2003)に依拠して,問題解決・問題設定につながる証明の構想を,4点(不確実な要素を用いた立論,不確実な箇所を明示した立論,利用可能な場合を明示した立論,不確実な論拠を前提とした立論)によって特徴付けた。次に,過去のデータの再分析をもとに,証明の構想において不成功な考えを含む論を立てる行為に着目した上で,その行為を前述の4点の特徴付けの中の2点に反映させることにより,その行為を証明の構想に基づく問題解決・問題設定の文脈に位置付けた学習過程を考案した。そして,平成30年度実施の調査にご協力いただく予定の教師の指摘を得ながら,具体的な問題案に即して,ICTの活用による活動の促進方法を含む教材研究を行い,暫定的な教材と指導法を立案した。 このように,生徒が自立的・協働的に証明問題の解決・設定に取り組む活動を促進するための教材と指導法を,理論的考察と実践的考察を総合して考案していく点に,本考察の独自性を指摘することができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」に記載した通り,平成29年度は交付申請書に記載の研究実施計画に従って研究を遂行し,おおむね計画通りに成果を上げることができた。また,独立基盤形成支援による研究基盤整備により,教材と指導法において,ICTの活用による活動の促進方法を含めて考察することが可能になった。平成30年度以降に,ICTの活用を含めた指導プログラムとしての教材及び指導法を,より科学的なエビデンスに基づいて考案・分析し,国際的な研究を進めることにつなげていく。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は,次の二つの課題に取り組む。第一に,立案した暫定的な教材及び指導法を実践的に検討するために,中学校教師を含む研究協力者の助言を得ながら,中学生2名のペアを対象とした予備調査を計画し実施する。調査の対象は国立大学附属中学校の第二学年の生徒を想定している。調査・分析は,平成29年度の交付申請書に詳細に記載した通り,研究倫理や人権の保護等に十分に配慮して行う。 第二に,調査協力校の教師を含む研究協力者の指摘を得ながら,予備調査の結果を質的方法によって分析する。そして,その分析と,関連する研究の知見とを総合し,教材及び指導法を再検討する。 平成31年度は,次の二つの課題に取り組む。第一に,再検討した教材及び指導法をもとに,中学校教師を含む研究協力者の助言を得ながら,一斉授業における本調査を計画し実施する。調査の対象は,公立中学校を想定している。ただし,特に証明の構想に基づく問題設定においては,活動の過程を振り返ることに関し高いメタ認知能力が必要となることが予想される。そのため,前年度の予備調査の結果に応じて,国立大学附属中学校において第一回の本調査を実施し,その結果の分析をもとに教材及び指導法を再検討した上で,公立中学校において第二回の本調査を行うなど,計画を柔軟に変更しながら実施する。 第二に,本調査の授業者を含む研究協力者の指摘を得ながら,本調査の結果を質的方法によって分析する。そして,教材及び指導法の妥当性を検証し,必要に応じて再検討を行うことにより,本研究の結論である教材及び指導法を導出する。さらに,一連の考察を総合し,ICT活用の手立てを含む学習指導への示唆を導出する。
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Causes of Carryover |
独立基盤形成支援による研究基盤整備は3年分が一括交付されたため,平成30・31年度に継続して使用する。
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