2018 Fiscal Year Research-status Report
必要な知識を想起する能力を育成する授業と評価水準を開発する実証的研究
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17K14043
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
中川 裕之 大分大学, 教育学部, 准教授 (00450156)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 知識の想起 / 検索 / 評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の目標は、去年度構想した、必要な知識を想起する能力を育成する授業を複数のクラスで実践し、考察することで授業設計の原理を抽出することであった。 そのために、数と式、図形領域の2つの授業をそれぞれ複数の学級で実践した。具体的には、1学期に数と式領域の授業を2つの学級で実施した。また、2学期に図形領域の授業を3つの学級で実施した。そして、毎月主催する研究会に参加している現場教員に録画した授業映像を視聴してもらい、議論することで、まずはよかった点と改善すべき点を明確にした。次に、生徒の変容がどこで起こっているかを分析し、その要因を探った。なお、収集したデータには、授業映像以外にも、研究代表者と院生1名による写真、フィールドノート、実際に生徒が記述した解答用紙のコピーもあり、それらも基にして議論を行った。 そうした議論を通して、生徒の変容があった箇所を明らかにし、変容と指導や活動との関係を探ることでその要因を考察することで変容のあった生徒を見いだした。そして、見いだした生徒の様子をビデオや解答状況を分析し直すことで、時系列に整理し、改めて授業者の指導や支援、友達との相談、授業での議論内容と変容の関連を探ることで、生徒の変容の要因を捉え直し、授業設計の原理の抽出を目指した。 その結果、必要な知識を想起するには、一度想起した知識が適切か、妥当かを評価する機会をもつことが重要であることが明らかになった。そこで、必要な知識を想起する過程を知識を検索する過程と検索した知識を評価する過程に分けることとし、その二つの過程を含むように授業を設計、展開することとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の目標は、去年度構想した、必要な知識を想起する能力を育成する授業を複数のクラスで実践し、考察することで授業設計の原理を抽出することであり、具体的には次の3つのことを計画していた。一つ目は「1学期に数と式領域の授業を複数の学級で実施すること」、二つ目は「2学期に図形領域の授業を複数の学級で実施すること」、三つ目は「生徒の変容などを考察するとともに、授業者による展開の相違点に着目して実践結果を分析し、授業設計の原理を抽出すること」であった。 このうち、一つ目と二つ目については実際に授業を実践することができた。ただし、授業者以外の研究協力者の先生方に授業を見学してもらうことはできなかったため、授業を録画し、その映像に基づいて事後の検討や反省の議論を行った。 三つ目については、実践した授業を分析することで、評価の重要性を明らかにできた。そこで、必要な知識を想起する過程を必要な知識を検索する過程と検索した知識を評価する過程といった二つのサブプロセスから捉えることとした。それらの成果については、日本数学教育学会の秋期研究大会において「適切なベースの想起を促す方法に関する研究―検索したベースを評価することに注目して―」という題で研究発表を行った。 このように当初の計画通り研究が進んでいるため、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究については、抽出した原理に基づいて単元を通した授業を設計、実践し、現場の教員と共に生徒の変容を分析することで知識を想起する能力の水準を設定することを目指す。そのために、以下の4つのことをする計画である。 第一に、授業設計の原理に基づいて、単元を通した授業を設計する。第二に、大学の附属中学校において、単元を通した授業を実施する。第三に、授業記録と生徒のノートから生徒の変容をとらえ、知識を想起する能力の高まりをとらえる水準を設定する。第四に、設定した水準について、授業実践協力者全員とその適切性を協議し、成果を整理する。 これらの計画を通して抽出した原理の適切性を検証するとともに、必要な知識を想起する能力の水準の設定を目指す。なお、水準の設定が難しい場合には、生徒の変容の過程を整理することで、変容の傾向や指導との関係を分析することにとどめることも考えている。
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Causes of Carryover |
研究成果をまとめた論文の執筆が遅れ、その審査に時間がかかったこともあり、その審査結果に合わせて実践し直す実験授業の実施が翌年度に繰り越されたため、その費用を繰り越しました。
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Research Products
(11 results)