2017 Fiscal Year Research-status Report
謡の学習が心身に及ぼす効果の解明―歌声・脳賦活・心理の多面的評価による検証-
Project/Area Number |
17K14047
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Research Institution | Tokyo University of Social Welfare |
Principal Investigator |
田村 にしき 東京福祉大学, 教育学部, 准教授 (50613494)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 能の学習プログラム / 音声分析 / 心理尺度評価 / fNIRS / 地域の伝統芸能 / 音楽教育学 |
Outline of Annual Research Achievements |
筆者はこれまで、地域保存会の伝承者・能楽師・小学校教員と協働し、宮城県の震災被害地域において伝承されてきた謡を核とした「能の学習プログラム」を開発し、伝承地区の小学校4年生を対象に継続的に実践してきた。この実践により、児童の自尊感情や地域愛着度が高まり、心身の安定をもたらせることがわかってきた。 本研究の目的は、この効果を更に精緻に検証するため、伝承地区の小学校4年生に、平成29年7月から平成30年6月の1年間と、平成30年7月から平成31年6月からの1年間、「能の学習プログラム」を実施し、音声学的評価、脳神経学的所見、心理学的評価による分析を行うことである。研究期間内には、以下のことを明らかにする。(1)音声分析に基づいた児童の謡をうたう声の変化の検証をする。具体的には、「能の学習プログラム」を受けた計50名の児童の歌声について、通算3回の授業終了後の声質を、教材の同じ箇所で比較し、児童の声が腹の底から出る響きのある声へと変化する過程を明らかにする。収録した音声の音響分析にはスペクトル分析を行う。さらに、歌声フォルマント帯域のフォルマント積分値を算出し、標準化得点に換算する。これらの値がどのように変化したかを定量的に評価し、教育効果を検証する。(2)授業前、2回目の授業終了後、3回目の授業終了後に、謡の聴取時と歌唱時における大脳皮質前頭前野の酸素化ヘモグロビン濃度長変化を測定した上で、神経生理学的評価を行う。使用する機器は、fNIRS(機能的近赤外光脳機能測定装置)である。(3)心理尺度評価による、児童の自尊感情や地域文化に対する愛着度の変化の検証を行う。自尊感情測定尺度(東京都版22項目)、学校適応感尺度(16項目)、地域愛着度尺度(10項目)を3回測定し、どのように変化したのか、各尺度間の関連性、またそのほかの要因とどのような関係があるのかを検証する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は、6月に、伝承地区の小学校4年生を対象に、第1回目の心理尺度評価によるアンケート調査を行った。アンケート調査は、自尊感情測定尺度(22項目)、学校適応感じ尺度(16項目)、地域愛着度尺度(10項目)である。7月には、地域保存会の講師と連携して、「能の学習プログラム」の中の第1次の授業「郷土の音楽に親しもう」を行った。授業後に、クラスの児童全員にワイヤレスマイクをつけてもらい、歌声を録音した。さらに、児童14人を抽出し、fNIRS(機能的近赤外光脳機能測定装置)機器を用いて、謡の聴取時と歌唱時における大脳皮質前頭前野の酸素化ヘモグロビン濃度長変化を測定した。第1次から第2次の授業の間は、週1回朝の時間に謡の練習を行い、発声、呼吸のトレーニングをした。12月には、プログラムの中の第2次の授業「謡と囃子を演奏しよう」を行った。授業後、第2回目の心理尺度評価によるアンケート調査、児童の歌声の録音、fNIRS機器を用いた脳波の測定を行った。来年度も「能の学習プログラム」を実施し、アンケート調査のデータ、児童の歌声のデータ、脳波のデータを蓄積していく。それと並行して、得られたデータを統計学的に分析することも進め、プログラムを行っていく中で、児童の歌声や心理面がどのように変化したかを調べている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も、「能の学習プログラム」の実践と、児童の歌声の音響音声学的評価、脳神経学的所見、心理学的評価をするためのデータの蓄積と分析を進めていく。 平成30年6月には、プログラムの中の第3次「能と狂言に親しもう」の授業を実施する。さらに、平成30年7月から平成31年6月まで、同様のプログラムを実践する。平成31年度には、平成29年度と平成30年度の小学校4年生に対する実践で得られたデータを、下記の通り分析する。(1)音声分析に基づいた児童の謡をうたう声の変化の検証をする。具体的には、「能の学習プログラム」を受けた計50名の児童の歌声について、通算3回の授業終了後の声質を、教材の同じ箇所で比較し、児童の声が腹の底から出る響きのある声へと変化する過程を明らかにする。収録した音声の音響分析にはスペクトル分析を行う。さらに、歌声フォルマント帯域のフォルマント積分値を算出し、標準化得点に換算する。これらの値がどのように変化したかを定量的に評価し、教育効果を検証する。(2)授業前、2回目の授業終了後、3回目の授業終了後に、謡の聴取時と歌唱時における大脳皮質前頭前野の酸素化ヘモグロビン濃度長変化を測定した上で、神経生理学的評価を行う。使用する機器は、fNIRS(機能的近赤外光脳機能測定装置)である。(3)心理尺度評価による、児童の自尊感情や地域文化に対する愛着度の変化の検証を行う。自尊感情測定尺度(東京都版22項目)、学校適応感尺度(16項目)、地域愛着度尺度(10項目)を3回測定し、どのように変化したのか、各尺度間の関連性、またそのほかの要因とどのような関係があるのかを検証する。
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Research Products
(2 results)