2021 Fiscal Year Research-status Report
平和・安全保障政策を考える主権者教育の実証・開発研究
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17K14051
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Research Institution | Shujitsu University |
Principal Investigator |
長田 健一 就実大学, 教育学部, 講師 (30736161)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 主権者教育 / 熟議 / 平和・安全保障政策 / 地政学 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに得られた日本の安全保障政策に関する議論の結果を記したデータを、量的・質的に分析したところ、以下のような点が課題あるいは授業開発上の重要な原理として明らかになった。 第一に、現在の日本(自衛隊)に防衛上どこまでのことができるかを正確に理解していない者が多い点が課題として挙げられる。例えば、現行憲法でも個別的自衛権を行使できると認識していた者は61%、「分からない」と答えた者は25%、また、現行の憲法・制度において集団的自衛権は“全面的”には行使できないことを理解していた者は47%、「分からない」と答えた者は39%であった。さらに、この二点を両方とも正しく理解していた者となると、23%に限られた(いずれも回答者は全体で57人)。このことから、まずは自衛権の行使に係る国内・国際の法制度に関して、正確な認識を形成した上で議論に入っていく必要がある(=学習過程・内容の原理)。 第二に、常に変化している世界情勢について、近年の状況がよく認識できていないことから、現状とはかけ離れた古い認識で議論をしている者が見られる点も課題である。この点に関しても、日本の安全保障をめぐる現在の世界情勢を捉えるための諸事実を議論開始前に示して理解を促すことが求められる(=学習過程・内容の原理)。 第三に、日本の安全保障(自国防衛)には何がどこまで必要かを、地政学的な視点から現実的に分析できていない点が課題として挙げられる。したがって、地政学の基本的概念や、自衛隊の現状及び各国の軍事力に関する認識・評価を、議論全体を通じて形成することが求められる(=学習過程・内容の原理)。 第四に、議論が価値観や感情だけに基づく空中戦になってしまう場合がある点も課題である。議論対象の内容・性質に即しつつ、議論を事実認識、価値観、懸念、推測等の様々な観点から段階的に進めていく必要がある(=学習過程の原理)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
コロナ禍の状況が落ち着くのを見計らって学校でのディスカッション(平和・安全保障政策に関する熟議)を実施したいと考えていたが、結局2021年度も実施困難な状況が続き、ディスカッションを学校で実施することができなかった。それゆえ、元々の研究計画が進展しておらず、補助事業期間の延長を申請した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後取り組む必要があるのは、①実験授業の実施(可能な限り)、②得られたデータのディスコース分析、③分析結果に基づく、生徒の認識・思考とその変容を説明する理論の生成、④授業モデルの修正である。
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Causes of Carryover |
学校での実験授業が実施できなかったことなど、研究計画の全体的な遅れが生じていることによる。2022年度においては、実験授業の実施(可能な場合)や学会参加のための費用、業者ないし学生アルバイトに依頼するディスカッションの文字起こし・データ入力のための費用、データ分析に用いるソフトや書籍の購入が主な使途となる。また、今後新たに実施するディスカッションの実施方法によっては、その際に使用するタブレット(もしくは比較的安価なノートPC)、ウェブカメラ、マイク、ビデオ等を数台購入する可能性がある。
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