2020 Fiscal Year Research-status Report
自閉症スペクトラム障害児の「こだわり」を用いた支援方法に関する研究
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17K14065
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
狗巻 修司 奈良女子大学, 人文科学系, 准教授 (30708540)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 自閉症スペクトラム障害 / 反復的行動 / こだわり / 支援者のはたらきかけ |
Outline of Annual Research Achievements |
自閉症スペクトラム障害児の「こだわり(反復的行動)」の障害特性や発達的変化,および指導法に関する先行研究のレビューを引き続き実施した。また,反復的行動が頻回にみられる3名の自閉症スペクトラム障害児を対象とし,定期的な観察を実施した。 2020年度は,1名の対象児の観察データを用いて,反復的行動の変容過程についての分析を実施した。とりわけ,支援者との相互交渉の質の変容過程と,反復的行動の生起頻度および行動の継続時間との関連について分析を実施している。現時点までの分析の結果から,支援者との相互交渉において「共同的関与(joint engagement)」の生起頻度の増加に伴い,反復的行動の中でも「常同行動」「限局行動」「自傷行為」の3つの生起頻度が減少する傾向にあることが明らかとなった。さらに,対象児が「常同行動」と「限局行動」のなかで示す特徴的な行動(例:ビー玉を筒に入れ続ける行動/ものを一箇所に集める行動/おもちゃを一直線に並べる行動など)に寄り添いつつ,支援者自身も同じ行動を行うことや,対象児が行う行動に支援者自らが参加することで「共同的関与」を成立させるなど,支援者が「こだわり」を『活かして』はたらきかける場面が増加したことも明らかとなった。 今後は反復的行動が生起する文脈(例:常同行動や限局行動が生起した際に用いた遊び道具や活動内容/自傷行為が生起する直前の支援者のはたらきかけ方など)も含めた分析を実施する予定である。さらに2020年度に実施した分析結果に基づき,2021年度に学術論文の執筆を予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナウィルス感染症の感染拡大の影響により,予定していた観察が実施できず,観察データの収集に遅れが出たこと,および,観察データの編集作業や観察データの評定のためのアルバイト雇用に支障が生じたため。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる2021年度においても,これまで観察を継続している児童3名について観察を実施し,データ収集を継続する。加えて,2020年度に実施した1名の対象児の行動変容のプロセスについての分析を進め,学術論文を執筆する。また残りの2名の対象児のデータについても分析を進めるとともに,支援者のはたらきかけ方や,反復的行動が生起する文脈といった要因の検討も推進する。 これらの検討により反復的行動の変容プロセスを検討することを通じて自閉症スペクトラム障害児の「こだわり」を『活かす』という視点からの支援のあり方とその有用性について明らかにしていく予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた原因は,主に以下の3つである。1)コロナウィルス感染症拡大に伴い,行動観察の実施が予定通り行えなかったことにより交通費の支出が少なくなった。2)観察データ収集が十分でなかったため,ビデオデータの評定として支出を予定していた人件費の支出が少なくなった。3)参加を予定していた学会もオンラインでの開催となり,学会参加のための交通費などの支出も生じなかった。 次年度に繰り越しになった予算については,ビデオデータの評定用PCの購入と人件費,図書の購入費等にあてる予定である。
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