2017 Fiscal Year Research-status Report
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17K14066
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
中島 栄美子 香川大学, 教育学部, 准教授 (70533884)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | RAN / 眼球運動測定 / 読み能力 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は,大学生23名を対象として,RAN課題(仮名条件,数字条件,線画条件,線画と数字の交互条件)遂行中の眼球運動を注視点追跡装置を用いて計測し,RAN課題の刺激条件が音読時間と眼球運動に及ぼす影響について検討した。併せて,文章音読課題における眼球運動計測もおこない,RAN課題の刺激条件と文章音読課題の関連性についても検討した。なお,対象者には事前に音読に関するアンケートを実施し,音読を得意あるいは苦手と思うかについて評定を求めた。アンケートの結果より,音読を得意と評価している群と苦手と評価している群に分けて各課題の分析をおこなった。RAN課題は,いずれの刺激条件においても得意群の方が苦手群に比べて音読時間が短く,眼球停留回数も少なかった。特に,線画条件における得意群と苦手群の眼球停留回数の差が顕著であった。また,音読時間が長い被検者の眼球運動軌跡は,逸脱や復帰現象はそれほど見られないものの,停留回数の増加が顕著であった。RAN課題の刺激条件と文章音読課題との関連性については,RAN課題の交互条件の呼称速度と文章音読課題の音読時間との間に正の相関を認めた。 本研究では,成人を対象にRAN課題の眼球運動計測をおこなった先行研究とほぼ同様の結果が得られた。一方で,就学前あるいは学童期の児童を対象とした先行研究と比較すると,RAN課題の成績およびRAN課題の刺激条件と文章音読との関連性において異なる結果も得られた。この点については,読みの発達を縦断的に検討していくうえで,重要な示唆が得られたものと考える。さらに,RAN課題遂行中の眼球運動を計測することで,RAN課題が評価し得るデコーディングや視覚運動機能の認知的要因について検討することが可能となり,読み困難の基盤にある認知的要因および有効な支援方法をより詳細に明らかにすることができるものと思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は,主研究における小学生を対象としたRAN課題によるアセスメントの手続きを確定するため,大学生を対象にRAN課題を実施し,課題遂行時の眼球運動について基礎的データを収集する計画であった。計画通り,大学生23名を対象にRAN課題および文章音読課題を実施し,課題遂行時の眼球運動を計測しデータを分析した。RAN課題は,仮名条件,数字条件,線画条件,数字と線画の交互条件の複数の刺激条件を用意し,成人を対象とした場合の刺激条件の違いによる全体的傾向や個人差を評価することができた。今後は,本研究で得た成人のデータをもとに小学生に実施する課題を精査するとともに,実施手続きについても再検討し,主研究を進めていく計画である。さらに,当初の計画にはなかった文章音読課題も並行して実施したことにより,RAN課題と文章音読,それぞれの課題遂行時の眼球運動データを得ることができ,両者の関連性についても検討を進めた。その結果,就学前あるいは学童期の児童を対象とした先行研究とは異なる結果を得た。今後,主研究において小学生のデータを収集した際には,成人を対象としたデータと比較することで,縦断的な視点から読みの発達について検討することも可能ではないかと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,平成29年度に得た成人のデータをもとに,小学生に実施する課題を精査し,課題ならびに検査の手続きを確定する。確定後,香川大学大学院教育学研究科特別支援教室に来談した小学校1年生から6年生までの児童を対象にデータを収集する。具体的には,平成29年度に実施した予備的研究より,複数の刺激条件によるRAN課題に併せて文章音読課題を実施し,両課題の相関関係を検討する。さらに,読みに影響する要因を詳細に分析するため,単語音読課題(有意味語・無意味語)も併せて実施し,RAN課題が測定し得るデコーディングあるいは視覚機能(眼球運動)等の認知的要因について検討する。 補助的研究として,主研究の対象となった児童のうち読みに困難を有する児童を抽出し,アセスメント結果に基づく個別指導を実施する計画であるが,児童および保護者の了解を得ること,指導の回数を確保すること等に困難が生じる可能性がある。その場合,個別指導は次年度に持ち越すことも視野に入れ,まずは基礎データの分析を詳細に行い,読み困難を有する子どもの指導支援につながる有用な知見を明らかにしたい。
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Causes of Carryover |
注視点追跡装置サポート延長料を計上していたが,研究途中の更新はデータの損失等の危険性があるため見送った。また,検査用・解析用のデスクトップパソコンを計上していたが,当該年度は大学のみでのデータ収集であったため,既存のものを使用した。次年度は地理的に離れた特別支援教室でのデータ収集を行うため,検査用・解析用のパソコンの購入に使用する計画である。
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Research Products
(1 results)