2017 Fiscal Year Research-status Report
Tuning of electronic ground states of 3D nanoporous graphene by nitrogen, phosphorous, boron doping
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17K14074
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
田邉 洋一 東北大学, 理学研究科, 助教 (80574649)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ナノ多孔質グラフェン / グラフェン / 窒素ドープグラフェン / 電界効果トランジスタ |
Outline of Annual Research Achievements |
グラフェンは安価で軽量かつ優れた電気特性から、シリコンの代替材料として有力視されているが、用途によっては、実用性能を得るには、何千枚ものグラフェンを集積化することが必要であるためグラフェンの3次元集積化に関する研究が近年盛んに行われている。本年度の研究では、1枚の高結晶性のグラフェンシートからなる3次元ナノ多孔質グラフェンへの元素置換によるキャリア・電子状態制御について明らかにすることを目的として、電界効果トランジスタを作製し、その輸送現象について調べた。窒素ドープナノ多孔質グラフェンにおいては、グラフェンの特徴である両極性伝導を観測し、窒素ドープによるグラフェンへの電子注入の影響によって、抵抗極大を示すゲート電圧の値がシフトすることを観測した。キャパシタンス測定からも、抵抗極大を示すゲート電圧付近で、キャパシタンスが極小を示すことから、同様な結論が示唆される。さらに、電気抵抗の絶対値をノンドープの試料と比較したところ、一桁程度値が上昇していることから、窒素ドープによる電子注入に加えて、散乱効果、又は電子状態の変化が輸送特性に現れていると考えられる。リンドープを行った試料においても、窒素ドープの場合と同様に、ゲート電圧の掃引に対して、グラフェンの電子状態に特徴的な両極性伝導を示す振る舞いを観測した。一方で、グラフェンへの電子注入による極小抵抗を示すゲート電圧の値のシフトと電気抵抗の絶対値の増大はあまり見られないという結果が得られた。このような、ドーパントに依存した結果の違いを明らかにするために、今後研究協力者の理論家を交えて議論を行って行く予定である。次年度は、磁場中輸送特性の測定を行い、元素置換によるナノ多孔質グラフェンの電子状態への影響を明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度の研究計画においては、元素置換を行ったナノ多孔質グラフェンを用いて電気2重層トランジスタを作製し、ゼロ磁場における輸送特性を明らかにする計画であった。現在までのところ、元素置換を行ったナノ多孔質グラフェンにおいて電気2重層トランジスタを作製し、ノンドープの試料と同様にトランジスタの動作を確認することが出来ている。窒素ドープを行った試料においては、ゲート電圧の掃引に対して、グラフェンの電子状態に特徴的な両極性伝導を示す振る舞いとして、電気抵抗の極大とホール抵抗の傾きの符号反転、さらには、キャパシタンスの極小を観測している。これに加えて、窒素ドープによるグラフェンへの電子注入により、極小抵抗を示すゲート電圧の値が負にシフトすること、さらに、電気抵抗の絶対値がノンドープの試料と比較して1桁程度増大するなど、窒素置換による物性への影響を確認することに成功している。リンドープを行った試料においても、窒素ドープの場合と同様に、ゲート電圧の掃引に対して、グラフェンの電子状態に特徴的な両極性伝導を示す振る舞いを観測した。一方で、グラフェンへの電子注入による極小抵抗を示すゲート電圧の値のシフトと電気抵抗の絶対値の増大はあまり見られないという結果が得られた。このような、ドーパントに依存した結果の違いを明らかにするために、今後研究協力者の理論家を交えて議論を行って行く予定である。従って、本年度の結果をもとに、次年度の研究を計画通り進めることによって、ナノ多孔質グラフェンへの元素置換による電子状態の変化と輸送現象への影響について明らかにすることが出来ると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、研究計画に従って、元素置換を行ったナノ多孔質グラフェンにおいて電気2重層トランジスタを作製し、輸送特性の測定を行った結果、ノンドープの試料と同様にグラフェンの電子状態に特徴的な両極性伝導を示す振る舞いを観測した。窒素ドープナノ多孔質グラフェンにおいては、グラフェンへの電子注入や電気抵抗の増大など、窒素ドープによる物性の変化を明らかにした。一方で、リンドープの場合には、グラフェンへの電子注入による極小抵抗を示すゲート電圧の値のシフトと電気抵抗の絶対値の増大はあまり見られないという結果が得られた。平成30年度においては、計画通りにゼロ磁場におけるトランジスタの測定を継続するとともに、様々なゲート電圧下において磁場中輸送特性の測定を行い、ノンドープの試料との比較を行うことによって、元素置換によるナノ多孔質グラフェンの電子状態への影響を明らかにする。また、ドーパントに依存した結果の違いを明らかにするために、研究協力者の理論家を交えて議論を行う。
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Causes of Carryover |
平成29年度の使用計画では、トランジスタ測定用のソースメーター(160万円)を購入し、計測に使用する予定であったが、より高精度の電流出力と読み出し、さらに、科研費申請段階で購入する予定であったポテンショスタットと同様にキャパシタンス測定が可能な半導体パラメータアナライザ(本予算からの支出:200万円)を、その他に受給した財団基金との合算で購入した。上記については、すでに変更届を提出している。このため、金額の制限から使用計画を変更する必要があり、当初購入予定のもので磁場中輸送特性の実験に関係する物品の購入時期を30年度に変更したため、必要な金額を繰り越した。平成30年度の使用計画についてであるが、研究計画に従って、必要な物品を順次購入予定である。
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Research Products
(2 results)