2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K14077
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
近藤 浩太 国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, 研究員 (60640670)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | スピン流 / 界面ラシュバ効果 / スピン電流変換 |
Outline of Annual Research Achievements |
金属/酸化物界面などの空間反転対称性が破れた系では、Rashba効果によりスピン縮退が解けた表面準位が誘起されることが知られている。このような表面・界面を用いることで、スピン流から電流へ、さらにその逆効果である電流からスピン流への高効率な変換が可能である。これまでの我々の研究で、ビスマス酸化物と非磁性金属界面で非常に高効率な変換が起こることを明らかにしている。本研究では、スピン流の透過特性制御を用いて行うために、界面におけるスピン流変換機構の解明および、軽元素界面を用いたスピン流生成およびその制御を目指している。そこで、本年度は研究計画に沿って、界面材料を系統的に変化させた実験を行った。その結果、非磁性金属のスピン軌道相互作用の強さに依存しない変換効率の変調や符号の反転現象を観測した。これらの実験結果と第一原理計算による界面付近のスピン構造を比較することで、界面でのスピン分裂は、構成する元素のスピン軌道相互作用の大きさだけでなく、電子分布の形(非対称性)が重要であることを明らかにした。この成果はScientific reportsに掲載された。そして、この知見を基に、ビスマス酸化物と仕事関数の近い酸化物(インジウム・スズ酸化物)を用いた実験を行った。仕事関数が近い場合には、界面付近の電子分布が似た構造になる可能性がある。その結果、インジウムやスズはビスマスよりもスピン軌道相互作用がはるかに弱いにも関わらず、ビスマス酸化物と同程度のスピン-電流変換が起こることを実験的に明らかにした。この成果は、金属/酸化物界面では、電子分布の制御はスピン流の変換効率などの物性を変調するのに非常に有効であることを示している。この研究内容については、現在投稿論文を準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に予定していた界面スピン分裂由来のスピン変換現象の起源解明と従来よりも軽元素を用いた高効率スピン流変換の実験的実証が完了したため、おおむね順調と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、金属/酸化物界面を用いてスピン流の透過率制御の研究を行う。スピン流の透過率は、界面のスピン分裂強度を変調することで制御できると考えている。これまでの実験と計算研究から、界面におけるスピン分裂は、界面を構成する原子の種類・大きさ・位置に強く依存することが分かっている。そこで、まずは試料温度を室温から低温(~10K)まで変化させたときのスピン分裂強度およびスピン流の透過率変化を測定する。金属と酸化物では熱膨張率が異なるために、界面付近で格子ひずみが生成すると思われる。それによる変化を実験的に明らかにする。さらに、圧電基板を用いて格子ひずみを系統的に導入することで、界面スピン流の変換現象および透過率の電気的な制御をめざす。
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Causes of Carryover |
当初はスピン流の透過率制御のテスト測定を、すでに報告していた酸化物/金属界面行う予定であったが、より最適な界面を本年度で見つけることができたため、そちらの試料作製および物性評価に専念したため、一部測定装置の購入を次年度に回した。 次年度は、本年度、新たに見つけたインジウム・スズ酸化物と非磁性金属界面を用いてスピン流の変換効率制御およびスピン流の透過率制御の実現に必要な電圧印加装置等を購入する予定である。
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Research Products
(10 results)