2017 Fiscal Year Research-status Report
電荷整列系マンガン酸化物における新型マルチフェロイクスの開拓
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17K14101
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
谷口 晴香 岩手大学, 理工学部, 助教 (60735877)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 電気磁気効果 / 電荷整列 / リラクサー |
Outline of Annual Research Achievements |
電気磁気効果(電場による磁化の変化や磁場による電気分極の変化)を示すマルチフェロイクスは次世代の省エネ型磁気メモリー素子等の開発につながり、基礎研究と応用の両面で注目を集めている。申請者は電荷整列系(Ca,Sr)Mn0.85Sb0.15O3の多結晶において、比誘電率実部の温度依存性がブロードなピークを示し、その値が1000にも達するというリラクサー的誘電異常を発見した。さらに、この誘電ピークがわずか10 mTの磁場によって15%ほど抑制されるという電気磁気効果も見出した。これらの第一報を国際会議LT28のProceedingsで発表した。 この誘電ピークと電気磁気効果のメカニズムに迫るため、比誘電率虚部や直流磁化の温度依存性も測定し、誘電ピーク温度と誘電エネルギー散逸温度や電荷整列温度の相関を調べた。誘電ピーク温度と電荷整列温度が良く一致し、いずれもSr置換によって上昇することから、(Ca,Sr)Mn0.85Sb0.15O3の誘電異常が電荷整列に起因する可能性を指摘した。また、エネルギー散逸が誘電ピークより50 K以上低温で観測されることから、双極子秩序が低温に向けて徐々に発達していると推測している。さらに、誘電率の周波数依存性も調べた。これらの結果を日本物理学会で発表し、論文投稿準備中である。 次は自発電気分極の有無を調べたいと考えており、ゼロ磁場中で焦電流測定の予備実験を行った。 また、Sb置換量の異なる多結晶を作製して同様の実験を行い、電気磁気効果の大小を比べた。さらに、比熱を測定してエントロピーの変化を求め、電荷整列の体積分率を見積もった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(Ca,Sr)Mn0.85Sb0.15O3の誘電異常と電気磁気効果について様々な測定を行い、一定の物理的描像を得るに至った。焦電流測定のデータも出始めている。さらに、Sb置換量の異なる物質にも着手し、系統的研究が展開している。
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Strategy for Future Research Activity |
AMnO3においてMnサイトの一部をSb以外の元素で置換したり、Aサイトに価数の異なる2種類の元素を用いたりして、電子もしくはホールドープ系の多結晶を作製する。各試料の誘電率と磁化を測定し、誘電異常と電気磁気効果そして電荷整列の有無を明らかにする。その結果をもとに、Sb置換系で観測された磁場センシティブな誘電異常の発現条件を考察する。 磁場中で電気分極を測定できるセットアップを立ち上げる。 Sb置換系の単結晶育成に挑戦し、誘電率などの異方性を明らかにする。
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Causes of Carryover |
2年目に予定していたSb置換系の物性測定を1年目に前倒しした代わりに、1年目に予定していた新物質探索を2年目に持ち越した。そのため、物品費において新物質合成用の原料粉代として想定していた分が次年度使用額となった。これは使用時期は変更になったが、2年目に当初の目的で使用する。
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Research Products
(5 results)