2017 Fiscal Year Research-status Report
Analysis of initial stage in thin film growth of organic semiconductors by using quartz crystal microbalance
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17K14106
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
松原 亮介 静岡大学, 工学部, 助教 (60611530)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 有機半導体 / 水晶振動子マイクロバランス / 薄膜成長素過程 / 平均基板滞在時間 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、有機半導体薄膜の構造制御において重要となる薄膜成長初期過程を、非破壊かつ薄膜の凝集構造に依存せずに評価可能な水晶振動子マイクロバランス(QCM)法によって明らかにすること目的としている。 平成29年度は、有機半導体のQCM測定に特化した測定装置の改良から着手した。具体的には、現有装置に既設の評価用水晶振動子に加えて、入射分子フラックスモニタ用の水晶振動子を増設し、蒸着源温度にフィードバックをかけながらフラックスを制御するように装置を改造した。また、水晶振動子の発振を安定させるため、水晶振動子温度を±0.1℃の精度で制御できるように改良を行った。これらの改良により、0.1 Å/min以下という極めて低い入射分子フラックスの条件おいても安定な測定が行えるようになった。 つづいて、有機薄膜トランジスタ活性層の定番材料であるペンタセンについて、QCM測定により薄膜成長初期過程を評価した。その際、薄膜トランジスタにおける活性層の成長と同じ条件で評価するため、水晶振動子表面の金電極をポリイミドで被覆した上にペンタセンを蒸着した。基板温度を53℃に固定し、入射分子フラックスをパラメータとして測定を行ったところ、フラックスが0.5 Å/min以下の成長条件において、フラックス一定にもかかわらず成長初期に階段状の付着挙動が見られ、その後一定レートでの成長モードに変化した。これは、ペンタセン分子が核形成前に2次元気体として基板上に存在しており、誘導時間を経て臨界核が形成され、以降は安定核が成長するという過程に対応していると推測される。これらの結果を準安定相を考慮した物理吸着モデルによって速度論的に解析したところ、ペンタセンの平均基板滞在時間が約380秒と見積もられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画どおり、有機半導体に特化したQCM測定装置の立ち上げを完了し、代表的な有機半導体材料であるペンタセンの薄膜成長初期過程の評価に成功した。また、薄膜成長初期における分子吸着量時間変化の速度論的解析によってペンタセン分子の平均基板滞在時間を見積もることに成功した。これにより、成長温度を変化させてQCM測定を行うことで、平均基板滞在時間の温度依存性から吸着エネルギーを算出するなど、薄膜成長素過程における基礎的な物理パラメータを定量的に評価することが可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、基板温度をパラメータとしてQCM測定を行い、平均基板滞在時間の温度依存性から吸着エネルギーの算出を行う。また、吸着エネルギーの解析に加えて、原子間力顕微鏡によるサブモノレイヤー薄膜のモルフォロジー観察と合わせて拡散エネルギーについても定量的な評価を行うことで、核形成を決定づける吸着・拡散現象の定量的な評価表方法を確立する。 評価手法が確立したのち、ポリイミド以外の絶縁性材料を用いて水晶振動子電極表面を被覆した場合や、ペンタセン以外の有機半導体材を用いた場合についても同様の測定を行い、基板表面の形状や官能基、および蒸着分子の化学構造が薄膜形成に及ぼす影響について考察していく。
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