2017 Fiscal Year Research-status Report
バンド形状エンジニアリングによる高出力・ 高効率層状熱電物質の理論設計
Project/Area Number |
17K14108
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
臼井 秀知 大阪大学, 理学研究科, 招へい研究員 (10722902)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 熱電効果 / 第一原理計算 / バンド構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
層状構造を持つ結晶構造の電子状態を最適化する「バンド形状エンジニアリング」により、熱電効果の性能向上を目指した理論研究を進めている。熱電物質の性能評価として、電力因子と熱伝導度の積に比例する無次元性能指数がある。当年度では、無次元性能指数が非常に大きいわけではないが、熱伝導度が低いLaOBiS2系物質に着目し、元素置換による熱電性能向上の可能性を調べた。仮想的に、ビスマス元素を同族元素であるアンチモン、ヒ素と置換し、電子状態を調べたところ、熱電性能が大きく上昇することがわかった。さらに、硫黄をセレンに置換したLaOAsSe2という仮想的な物質の性能評価を行ったところ、条件によっては無次元性能指数が2を超える、最高性能物質の一つとなる計算結果が得られた。この起源を調べたところ、元は2次元的な放物線バンド分散が、元素置換によって擬1次元ディラックコーンと呼ばれる特殊なバンド形状に変化することであるとわかり、この成果を国内学会や国際会議、論文誌で発表した。 また、層状構造を持つZintl相化合物に着目し、特に122系と呼ばれる物質群に対して理論的な熱電性能評価を行った。122系はAB2X2と呼ばれ、Xがアンチモン元素の研究は多く行われているが、Xがヒ素やリンの場合の研究はほとんど行われていない。そこで、Xにアンチモンだけでなく、ヒ素とリンも含めた数十種類の化合物に対して熱電効果の計算を行い、系全体の統一的な理解と新たな高性能物質の提案を目的として理論解析を行った。その結果、バンド分散の縮重度が基本的に熱電性能を決めるが、それだけでなく、バンド形状の異方性が強く影響してくることが研究からわかった。この成果は国内学会において発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初は最終年度である2年次に無次元性能指数2を超える物質の提案を行う予定であったが、初年度にこの目標を達成することが出来た。また、122系Zintl相化合物における熱電性能の評価を統一的にまとめ、この系における熱電性能向上の条件を理解し、2年次の物質探索に大きな指針を与えた。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き122系Zintl相化合物やLaOBiS2系物質の研究を行う。合成の実現性やキャリアドーピングにおける問題などを、実験を主とする研究者とともに議論を行っていく予定である。また、BiCuSeO系化合物の結合角と熱電性能の関係、元素置換がバンド形状に与える影響について調べ、様々な系における熱電性能向上の可能性を探索する。
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Causes of Carryover |
二年次に招待講演の国際会議並びに国外研究者との議論の予定が急遽入ったため、初年度の予算を繰り越して使用することとした。次年度では国際シンポジウムや熱電国際会議、マックスプランク研究所の一時滞在に多くの予算を割り当てる予定である。また、国内の複数の学会にも参加する予定である。
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Research Products
(14 results)
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[Journal Article] Retreat from Stress: Rattling in a Planar Coordination2018
Author(s)
Koichiro Suekuni, Chul Ho Lee, Hiromi I. Tanaka, Eiji Nishibori, Atsushi Nakamura, Hidetaka Kasai, Hidetomo Usui, Masayuki Ochi, Takumi Hasegawa, Mitsutaka Nakamura, Seiko Ohira‐Kawamura, Tatsuya Kikuchi, Koji Kaneko, Hirotaka Nishiate, Katsuaki Hashikuni, Yasufumi Kosaka, Kazuhiko Kuroki, Toshiro Takabatake, 他1名
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Journal Title
Advanced Materials
Volume: 30
Pages: 1706230~1706230
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Direct observation of double valence-band extrema and anisotropic effective masses of the thermoelectric material SnSe2017
Author(s)
Takanobu Nagayama, Kensei Terashima, Takanori Wakita, Hirokazu Fujiwara, Tetsushi Fukura, Yuko Yano, Kanta Ono, Hiroshi Kumigashira, Osamu Ogiso, Aichi Yamashita, Yoshihiko Takano, Hitoshi Mori, Hidetomo Usui, Masayuki Ochi, Kazuhiko Kuroki, Yuji Muraoka, Takayoshi Yokoya
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Journal Title
Japanese Journal of Applied Physics
Volume: 57
Pages: 010301~010301
DOI
Peer Reviewed
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