2017 Fiscal Year Research-status Report
Development of a structural analysis method based on precise lattice distortion measurements using scanning transmission electron microscopy
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17K14119
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Research Institution | Japan Fine Ceramics Center |
Principal Investigator |
小林 俊介 一般財団法人ファインセラミックスセンター, その他部局等, 研究員 (60714623)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 走査型透過電子顕微鏡 / 計測技術 / 原子変位 / 画像情報 / チタン酸バリウム |
Outline of Annual Research Achievements |
近年の走査型透過電子顕微鏡(STEM )法ではナノメートルオーダーの格子変形が直視できるようになり、原子レベルでの構造解析における極めて有効な手法となった。しかしながら、現在の材料科学の分野において解析対象・物性発現サイズがナノメートルサイズとなってきており、今後はさらに一桁小さいピコメートルオーダーの格子変形を計測する技術が必要不可欠となりつつある。この点に着目し、STEM 法から高精度な画像取得技術と得られた像の情報処理技術によるピコメーターオーダーの格子変形を定量化する超高精度変位解析技術を構築した。この技術は人の目では認識することさえできなかった、僅かな格子変形をも可視化できる。本申請研究では、これまで培ってきたこのSTEM法による超微小変位計測システムをさらに発展させ、材料物性へ直接影響するピコメートルオーダーの格子変形を高速に解析する技術を構築することを目的とする。 初年度(2017年度)はこれまで開発した変位解析システムにおける問題点であった解析時間の短縮を実施し、多くの画像解析を短時間で完了するための基盤技術構築を試みた。具体的には、2D Gaussian Fittingによる原子輝点中心座標の高精度抽出を並列処理計算を行い、さらに、得られた原子座標を基に重心位置からの原子変位量を自動的に計算する汎用性の高い自動解析プログラムの構築を行った。これにより、僅かな格子変形に伴う変化を多角的な視点から可視化でき、直感的な解釈が可能となり、さらに、一つの画像解析にかかる時間を数分以内と大幅に減少させることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度はこれまで開発した変位解析システムにおける問題点であった解析時間の短縮を実施し、多くの画像解析を短時間で完了するための基盤技術を構築した。具体的には、汎用性の高いMatLab プログラムを用いて自動解析プログラムの構築を行った。 STEM法における代表的なイメージング法であるHAADF法では原子番号に比例したコントラストが得ることができ、その輝点が原子位置に対応する。一方で、このSTEM法では電子プローブを走査させ、散乱された電子を検出することにより結像を行為、プローブを走査する際、イメージドリフトやスキャンノイズが生じ、位置精度を著しく低下させる。この問題を克服するため、高速スキャンにより取得した数十枚の積算像を用いる。これにより、イメージドリフト、スキャンノイズを低減させた高SN画像取得でき、僅かな変位情報を正確に含んだ画像の解析が可能となる。 この方法において取得した画像からピコメートルスケールでの変位解析を実施するためのMatLabプログラムを用いた解析プログラムを構築した。まず、大まかな原子位置(輝点位置)の抽出を行う。その抽出した各輝点に対して2D Gaussian Fittingによる原子輝点中心座標の高精度抽出を実施した。さらに、2D Gaussian Fittingを並列処理計算により、輝点中心位置計算速度の高速化を実施した。そして、得られた原子座標を基に、重心位置からの原子変位量を自動的に計算し、数値データとして算出させる。具体的には、変位ベクトルマップ、面積マップと内角度マップ解析を自動的に数値データとして計算処理を実施した。これにより、僅かな格子変形に伴う変化を多角的な視点から可視化でき、直感的な解釈が可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に構築した高速ピコメートル変位計測システムの性能評価を実施する。具体的には本手法の測定誤差を関数によるフィッティング精度と実験の側面において問題となる誤差を検証する。 精度評価用の結晶としてチタン酸ストロンチウム(SrTiO3)とチタン酸バリウム(BaTiO3)を用いて各Tiイオンの重心位置からの変位量を算出し精度に関して検討を行う。SrTiO3は立方晶であり、Tiイオンの変位はない。一方で、BaTiO3は室温では正方晶であり、Tiイオンはc軸方向へ10 pmほど変位した結晶構造を有している。すなわち、格子定数および各イオンの変位量が既知の材料において構築プログラムの評価を実施することで、本手法の誤差要因を特定する。測定誤差が生じる要因としてプログラムの問題(特に2D Gaussian Fittingによる輝点抽出の誤差)、そして、STEM観察条件から生じる実験的な観察像のアーティファクトである。まず、要因検討として、STEM像のアーティファクト要因を含まないシミュレーション像によりプログラムの精度を確認する。その際、各種パラメータ、特にフィッティング関数の最適化を検討し、精度向上を達成する。次に、TEM試料作製条件(試料厚、加工歪み等)、観察時の試料傾斜、収差による影響を網羅的に検証することで、実験的なアーティファクト要因を特定し、ピコメートルオーダーへの解析に必要な実験的な条件を決定する。実験的なアーティファクトを定量化することは、精度向上のみではなく、本手法を普及させる上で非常に重要な課題となる。これらの問題を克服し、測定誤差が少なくとも10 pm以下となるようプログラムの改善および観察条件を設定する。最終的には、測定誤差10 pm以下を達成した高速ピコメートル変位計測システムを構築することを目標とする。
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Causes of Carryover |
旅費費用が当初予定よりも使用しなかったため、次年度使用額が生じた。本年度は、次年度使用額が生じた助成金と合わせて旅費および物品費として使用する。
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Research Products
(4 results)