2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K14134
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
貞包 裕加 (堀川) 山口大学, 大学院創成科学研究科, 助教 (10589039)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 軟X線発光分光 / イオン液体 / 大気圧分光 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は研究計画のうちの「大気圧下の液体測定用セットアップの構築と酢酸系イオン液体・溶媒和イオン液体の電子状態観測」を行った。 1.大気圧下の吸収分光測定セットアップ Heパスを利用した軟X線吸収分光測定セットアップを組み上げ、広島大学の放射光施設において動作確認を行い、液体試料の吸収測定まで行えることを確認した。当初の設計では垂直に立てた銅板に溝を掘り、粘性の高いイオン液体をそこに保持する構造となっていたが、より容易に試料設置ができるよう、液体の保持構造を改良した。またセットアップ内に酸素濃度計を設置することで、試料室内のHeへの置換状況をリアルタイムに確認できるようにした。これにより、試料入れ替えの時間短縮とHeの使用量節約ができた。一般的な粉末試料から粘性の高いイオン液体、水と幅広い試料の吸収測定に成功した。 2.酢酸系イオン液体、溶媒和イオン液体 二酸化炭素を吸収する酢酸系イオン液体[C4mim][AcO]について軟X線分光測定を行った。純粋なイオン液体の状態と二酸化炭素を吸収させた後のイオン液体の吸収分光測定を行ったところ、純液体では酸素領域の吸収スペクトルは酢酸イオンの状態を示す鋭いπ*ピークが観測されたが、二酸化炭素を吸収させたイオン液体ではこのπ*ピークがブロードニングしており新たな分子種が生成していることが示唆された。今後この形状変化を起こす要因について解明していく。 またLi二次電池の電解液として研究が進められている溶媒和イオン液体[Li(Gly)][TFSA]についても軟X線分光測定を行った。Glyme分子が選択的に励起される照射光エネルギーを探し、混合液中のGlymeのみの電子状態抽出を行った。発光分光測定の結果、Glyme純液体の場合に比べて溶媒和イオン液体中のGlymeはHOMOレベルが低エネルギー側へ大きくシフトしていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度実施予定であった「大気圧下の液体測定用セットアップの構築と酢酸系イオン液体・溶媒和イオン液体の電子状態観測」について計画通り進めることができており、研究目的を達成する上でおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は当初の予定通り、測定セットアップの改良と得られた軟X線分光スペクトル解釈のための量子化学計算を研究協力者と進めていく。 1.大気圧下の吸収分光測定セットアップ 検出器につなぐプリアンプの故障や不調により吸収スペクトルが乱れることが多かったため、予備品としていくつかストックしておくために、より安価に入手できるアンプを組み込んでいく。 2.酢酸系イオン液体、溶媒和イオン液体 29年度の測定結果から、二酸化炭素吸収後のイオン液体中の酢酸分子は中性分子とも陰イオンとも異なる電子状態に変化していることが分かった。30年度はこのイオン液体中で生成する可能性のある分子種の理論吸収スペクトルを全て算出し測定結果と比較することで生成分子を突き止めていく。溶媒和イオン液体に関しては、今後濃度変化測定も行うことで、シフトしているピークがGlymeのHOMO由来の発光であることを実証していく。
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Causes of Carryover |
消耗品費が予定より少額で済んだため次年度使用額が生じた。その額は少額であるため、次年度の消耗品費に繰り越して使用する予定である。
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