2017 Fiscal Year Research-status Report
Understanding femtosecond X-ray damage processes via X-ray pump-X-ray probe scheme
Project/Area Number |
17K14137
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
井上 伊知郎 国立研究開発法人理化学研究所, 放射光科学総合研究センター, 基礎科学特別研究員 (30783401)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | X線自由電子レーザー / フェムト秒X線ダメージ / X線構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、X線自由電子レーザーからの高強度X線が物質に照射された際に起こるフェムト秒X線ダメージ過程を解明することにある。具体的には、X線ポンプ・X線プローブ法によって、(i) 原子のイオン化の進行速度と程度、(ii) イオン間のクーロン反発力による原子変位の時間発展、を観測する。実験結果と理論モデルとを突き合わせることで、フェムト秒X線ダメージの物理描像を明らかにする。これによってダメージの効果を組み込んだX線構造解析法を実現するための第一歩を踏み出す。 本年度は、まず、ダイヤモンドをモデル試料としてX線自由電子レーザー施設SACLAにおいてX線ポンプ・X線プローブ実験を行なった。光子エネルギー7.8 keVのポンプ光と光子エネルギー11.5 keVのプローブ光をX線集光ミラーによって、それぞれ200 nm程度のサイズに集光し、その集光点にダイヤモンド薄膜を設置した。ポンプ光とプローブ光の時間差を変えながら、ダイヤモンドからのプローブ光の111, 220, 311, 400, 331反射を測定した。その結果、X線照射後20 fs程度から各々の反射強度が徐々に減衰していく様子が観測された。これらの反射強度の減衰は、X線照射による結晶格子の乱れやダイヤモンドを構成している炭素の電子状態が変わったことに起因すると考えられ、フェムト秒の時間スケールで起こるX線ダメージ過程を明瞭に捉えることに成功したと言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
X線自由電子レーザーSACLAにおいてX線ダブルパルスを利用したX線ポンププローブ法をダイヤモンドに適用することで、2017年度の目標であった高強度X線によるフェムト秒のダメージ過程の実験データを測定する事ができた。高強度のX線をダイヤモンドに照射後、20フェムト秒からX線照射による結晶格子の乱れやダイヤモンドを構成している炭素の電子状態が変わったことに起因すると考えられる明瞭な回折強度の変化が観測された。 得られた実験データは、次年度の目標であるX線ダメージ過程の物理モデルの探索の基礎となるものであり、予定通りに次年度の研究に移行することが出来る。
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Strategy for Future Research Activity |
研究最終年度である次年度は、得られた実験データの解釈とX線ダメージ過程の物理モデルを探索する。実験結果を既存のX線ダメージの理論モデル(分子動力学シミュレーション・モンテカルロシミュレーション・流体力学モデル・particle-in-cellシミュレーション)から予測される結果と比較する。どのモデルが実際の実験結果をよく説明できるかを調べることで、フェムト秒X線ダメージの物理描像を明らかにする。
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Causes of Carryover |
X線自由電子レーザー施設SACLAを使用時の消耗品費が予想よりも少なかったため次年度使用額が生じた。この次年度使用額は、2018年度においてSACLAを使用時の消耗品費として使用する予定である。
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Research Products
(6 results)