2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K14148
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
曽田 繁利 国立研究開発法人理化学研究所, 計算科学研究機構, 研究員 (60466414)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 量子ダイナミクス / 強相関系 / 密度行列繰り込み群法 / 大規模計算 / 手法開発 / 量子アニーリング / 量子コンピュータ / 量子情報 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、強相関系の量子ダイナミクスを明らかにすることを目的に、密度行列繰り込み群法を応用した強相関量子シミュレータの開発を行うことである。平成29年度に実施した強相関量子シミュレータの開発における進展は、時刻の異なる状態について、密度行列繰り込み群法によりそれぞれの時刻の状態を表現するために最適化された異なるヒルベルト空間の表現で与える新たな時間依存密度行列繰り込み群法の手法を開発した。ここで開発された手法は、動的密度行列繰り込み群法で用いられるマルチターゲットの手法を応用し、異なる時刻の状態をひとつの最適化されたヒルベルト空間の表現で与える場合と比較して、半分程度の制限された基底の数でよりより高精度な結果を得ることが確認された。特に密度行列繰り込み群法の計算コストはこの制限された基底の数の3乗で与えられることから、本課題で開発された手法は非常に有効であると考えられる。また、同時にこの密度行列繰り込み群法の大規模並列化を進め、本研究の対象である強相関量子系の量子ダイナミクスの研究を行った。平成29年度の研究成果としては、幾何学的なフラストレーション効果により量子モンテカルロ法では取り扱いが困難な系を中心に、三角格子ハバード模型やKagome-strip鎖の新奇量子相の研究、またSPring-8等の大規模実験施設と連携したキャリアドープされた銅酸化物高温超伝導体の電子状態の解析等を行った。また、本研究課題で開発を行っている多次元系へ応用可能な時間依存密度行列繰り込み群法の応用研究として組合せ最適化問題に対して有効であると考えられる量子アニーリングに対する応用研究を行い、その研究成果を国際会議において発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の目的である強相関量子シミュレータの開発のための多次元系に応用可能な時間依存密度行列繰り込み群法の手法開発は完了し、実際の応用研究の段階へ進んでいる。特に、平成29年度に開発した時刻の異なる状態について、密度行列繰り込み群法によりそれぞれの時刻の状態を表現するために最適化された異なるヒルベルト空間の表現で与える新たな時間依存密度行列繰り込み群法の手法は、計算コストの面からも非常に効率的な計算の実行が可能であり、高精度な強相関量子系の実時間シミュレーションが可能である。また、本研究課題が目標とする量子アニーリング、または量子ビットによる量子コンピュータのシミュレータとして、任意の相互作用の導入が可能な手法であることからその応用が可能である。また、この新たな時間依存密度行列繰り込み群法のプログラムも大規模並列計算に対応する形で完成しており、すでにその応用研究も進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで開発が進められた多次元系に応用可能な時間依存密度行列繰り込み群法をさらに拡張し、様々な応用が可能な強相関量子シミュレータの完成を目指す。そのための計算手法のさらなる発展や量子コンピュータのシミュレーションが可能な様々な相互作用の導入が可能なプログラム開発、また効率的な計算が可能なアルゴリズム開発や大規模並列化等を行う。同時に、本研究で開発した強相関量子シミュレータの応用研究を行う。本研究で開発し強相関シミュレータは、実時間量子ダイナミクスの研究のみではなく、SPring-8やJPARC等の実験の解析に用いることが可能である。また、幾何学的フラストレーション効果等により量子モンテカルロ法ではいわゆる負符号問題により計算が困難な系や、厳密対角化法では取り扱いが事実上困難な巨大な内部自由度を持つ系等への応用研究も同時に進める。
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Causes of Carryover |
平成29年度に予定していた強相関量子シミュレータ開発における問題解決に関わる議論のための国内出張が、研究開発が問題なく進み議論の必要が発生しなかったため。今後、買い夏した強相関量子シミュレータの応用研究についての議論も含め国内、および海外旅費として利用する予定である。
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Research Products
(9 results)