2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K14148
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
曽田 繁利 国立研究開発法人理化学研究所, 計算科学研究センター, 技師 (60466414)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 量子ダイナミクス / 強相関量子系 / 量子多体系 / 密度行列繰り込み群法 / 大規模計算 / 量子コンピュータ / 量子情報 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度の研究では、これまでに開発した大規模並列密度行列繰り込み群法のプログラムのスーパーコンピュータ「富岳」利用に向けた高度化開発を行なった。特に、強相関量子系の実時間シミュレーションでは時間刻み毎に密度行列繰り込み群法による基底の最適化を繰り返し実行することで、目的の時刻までの実時間シミュレーションを実行する。そのため、密度行列繰り込み群法の繰り返し数が非常に大きくなり、各大規模計算機において設定された制限時間内に目的の計算が終わらない場合がある。また、このような長時間の大規模計算においてはハードウェア故障に遭遇する可能性も大きくなり、目的のシミュレーションの実行に困難が生じる。このような場合に対応するため、本研究では密度行列繰り込み群法のアルゴリズムに対応した効率的なバックアップとリスタートを可能にすることを目的に、これまでに開発した大規模並列密度行列繰り込み群法に対してこのような機能を実装した。密度行列繰り込み群法では、通常、その計算に必要なハミルトニアンや計算する物理量等の演算子を目的の計算に対応した基底で記述し、これらをメモリ上に保持している。しかしながら、これらの演算子をそのまま取り扱う場合、これらは非常に巨大なデータ量となる。さらに、このようなデータの保存は、基底が密度行列繰り込み群法により最適化されるたびに必要になるため、全体の計算時間から見てもこのデータの保存に要する時間が大きな割合を占めることとなる。そこで、本研究では、保存するデータとして基底変換を行う変換行列のみをストレージ上に保存し、リスタートの際にはこの変換行列から必要な演算子を新たに生成することで、密度行列繰り込み群法の効率的なデータのバックアップとリスタートを実現した。開発したプログラムは銅酸化物高温超伝導に対応した量子格子模型の実時間ダイナミクスに適用し、その成果を報告している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
強相関量子シミュレータの開発については、当初に予定していた手法の開発、およびその手法の実装を完了している。さらに、本分野の研究の進展とも歩調を合わせ、さらなる研究へ応用可能なシミュレータとして開発が進んでいる。同時に、開発した大規模並列密度行列繰り込み群法プログラムによる応用研究も順調に進展し、その研究成果も論文や学会で報告している。したがって、本研究課題は概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに開発した密度行列繰り込み群法による強相関量子シミュレータをさらに発展させることを目的に研究開発を引き続き行う。特に、スーパーコンピュータ「富岳」をはじめとした最新の大規模計算機の利用を想定し、これまでは計算コストの大きさから実行が非現実的であった計算の実現に向けた手法開発とその大規模並列計算に向けたプログラム開発を行う。また、これまでの研究成果について積極的に発表を行うこと、また本研究で開発した強相関量子シミュレータの利用促進を図り、本研究分野の発展に貢献したい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止に関連して参加を予定していた国内外の学会等のオンライン開催等により旅費の使用が無かったため。 今後の使用計画としては、研究データの整理のためのPCやソフトウェアの購入、および国内外の学会の参加費と旅費等に使用し、本研究課題の研究成果を発表するために用いる。
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Research Products
(5 results)