2017 Fiscal Year Research-status Report
リー環・量子群の圏論的表現論の研究とモジュラー表現論への応用
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17K14154
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
土岡 俊介 東京大学, 大学院数理科学研究科, 特任助教 (00585010)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 複素鏡映群 / ヘッケ環 / BMR予想 / 書き換え系 / 非可換グレブナ基底 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,Brou\'e-Malle-Rouquier自由予想を最終的に解決した.Brou\'e-Malle-Rouquier(Crelle,(1998))は複素鏡映群についてヘッケ環や組紐群といったリー環論的対象を定義し,これらが通常のCoxeter群(実鏡映群)のものと同様の性質をもつだろうと予想した.BMR自由予想(BMR freeness conjecture)はこのうちもっとも有名なものであり,たとえば日本語wikipediaでも「BMR」の転送項目4件中の1つに「BMR 予想」をみることができる(2018年4月現在).またP.Eingof(arXiv:1606.08456)やI.Marin(qwww.lamfa.u-picardie.fr/marin/arts/reportBMR.pdf)などのサーベイからもわかるとおり,さまざまなアプローチで多くの研究者たちによって取り組まれてた.2016年までの段階で5つの複素鏡映群についてBMR自由予想を証明すればよいところまで進展し,2017年2月までの段階で,3つの複素鏡映群G17,G18,G19について証明すればよいことが知られていた.私はこれらを含むすべてのランク2の複素鏡映群について,G.Bergman(Adv.Math.,(1978))のdiamond補題(Gr\"obner 基底の非可換版)に触発された手法で,計算機も援用し証明を与えた.
またB2型regular柏原クリスタルの純グラフ理論的特徴付けをあたえた.これはStembridgeが2003年に,simply-laced GCMに付随するregular柏原クリスタルの純グラフ理論的特徴付けをあたえて以来,SternbergやDanilov-Karzanov-Koshevoyらによって部分的な結果がえられていたものの,未解決であった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究は「20年未解決であった(それなりに有名な)予想を肯定的に確定した」という明確なインパクトがあるが,その他にも少なくとも3つ意義をあげることができる.1つめは,BMR自由予想はヘッケ環に関する予想だが,有限簡約群やCherednik代数などの一見異なる群や代数の表現論への応用も知られているため,広く表現論において価値があるということである.2つめは,本論文の手法は,ヘッケ環以外にも生成元と関係式で定義された「小さな代数」に適用できる可能性を秘めているということである(実際,リー環論における例外型の研究では,計算によってでしか確認できない命題が存在しても不思議はない).3つめは,ヘッケ環のさらなる理解をうながすであろうということである.たとえばKnizhnik-Zamolodchikov関手やRiemann-Hilbert対応を用いてBMR自由予想の弱いversion を示すI.Losevによる手法は,BMR自由予想には幾何学に基づく美しい証明が存在してもおかしくないと思わせる.提唱の経緯から,BMR自由予想は,やや安直で根拠のとぼしい予想であると考えることにも一定の合理性があったが,今回,BMR自由予想が正しいことが確定したことにより,安心して本質的な証明の探索へと着手できる.またヘッケ環のBMR自由予想以上に精密な構造論の研究も可能になるだろう.実際,ごく最近のプレプリント[Boura et.al.(arXiv:1802.07482)]では,BMM symmetrizing trace予想という次の段階への研究が提唱されている.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度はBMR自由予想に注力しすぎたため,その他の研究課題に関する結果をまとめることに時間を割けなかった.しばらくは,それらを論文にまとめることを優先したい。
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Causes of Carryover |
初年度に遂行予定だった研究計画の一部に変更が生じ,次年度以降に繰り越すことになったた.差額は,論文整理をお願いするための謝金として計上予定である.
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Research Products
(5 results)