2017 Fiscal Year Research-status Report
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17K14159
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中嶋 祐介 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 特任研究員 (20783096)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 非可換クレパント特異点解消 / Cohen-Macaulay加群 / 団傾加群 / トーリック環 / ダイマー模型 / 日比環 |
Outline of Annual Research Achievements |
非可換クレパント特異点解消 (non-commutative crepant resolution=NCCR)は、通常のクレパント特異点解消の非可換類似を与える代数である。良い特異点に対してはクレパント特異点解消の連接層の導来圏とNCCR上の有限生成加群の導来圏が同値となり、この同値性により環の表現論の視点から特異点解消を考察することが可能となる。また、NCCRは団傾理論や高次元Auslander-Reiten理論とも深い関係があり、NCCRを架け橋としてこれらの多元環の表現論において研究されている理論を特異点の研究に導入することができる。 このようにNCCRは特異点と他分野をつなぐ重要な対象であるが、NCCRを持つかどうかわかっていない特異点も多く存在する。代表的なものがトーリック特異点であり、2次元及び3次元の場合はNCCRの存在が知られているが (特に3次元の場合、NCCRはダイマー模型と呼ばれる実2次元トーラス上に描かれた二部グラフから構成できる)、4次元以上ではいくつかの特別な場合を除いてNCCRが存在するか知られていない。そこで、今年度の研究では日比環と呼ばれる対象に注目した。日比環は半順序集合の情報から構成される特別なトーリック特異点であり、その環論的性質を付随する半順序集合の情報から得ることが出来る。特にconicと呼ばれる階数1の極大Cohen-Macaulay加群は、日比環に付随する半順序集合によって完全に特徴付けることができ、このconicな加群を用いることにより、非可換特異点解消と呼ばれるNCCRよりも弱い性質の非可換代数を構成することができる。今年度の研究では、このconicな加群から得られる非可換特異点解消の構成を修正することにより、因子類群の階数が小さい日比環のNCCRを具体的に構成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
非可換クレパント特異点解消の存在が知られていなかった、いくつかのトーリック環に対して、新たに非可換クレパント特異点解消を構成することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
先行研究にて構成できた非可換クレパント特異点解消について、その表現論的性質や(非可換)代数幾何との関連を考察していく。また、非可換クレパント特異点解消の存在が知られていないトーリック特異点に対しては、引き続きその存在性を検証していく予定である。
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Causes of Carryover |
残額はごくわずかであったため、来年度の出張費用の足しにすることにした。
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