2018 Fiscal Year Research-status Report
トーリック多様体の双対欠損の組合せ論的記述に関する研究
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17K14162
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
伊藤 敦 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 助教 (90712240)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | セシャドリ定数 / K安定性 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は,主に以下の2つの研究を行った.
(1) セシャドリ定数とは代数多様体上の直線束の正値性を測る不変量(非負実数)である.Florin Ambro氏(Institute of Mathematics of the Romanian Academy)との共同研究では,まずトーリック多様体の場合にセシャドリ定数が多面体のn番目の逐次最小という不変量の類似であることを観察した.ここでnは考えている代数多様体(もしくは多面体)の次元であり,逐次最小は多面体の「大きさ」を測る不変量である.その観察をもとにトーリックとは限らない代数多様体上の直線束に対し,i番目のセシャドリ定数(ただしiは1からnまでの整数)を定義し,トーリック多様体の場合にはそれが多面体のi番目の逐次最小の類似であることを示した.またi番目のセシャドリ定数の性質をしらべ,特に逐次最小に関するミンコフスキーの第二定理の類似をi番目のセシャドリ定数について証明した.
(2) ファノ多様体XのK安定性は,テスト配置のドナルドソン-二木不変量の正負を見ることで定義される.またXの自己同型群が簡約でないときはXがK-poly安定ではないことが知られている.Codogni氏とDervan氏は,自己同型群が簡約でない場合,その冪単根基を用いて定義されるLoewyテスト配置(もしくはその類似物)のドナルドソン-二木不変量が負になると予想した.具体的なある3次元トーリックファノ多様体のLoewyテスト配置とドナルドソン-二木不変量を計算することにより,その予想の反例を与えた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
トーリック多様体の双対欠損を多面体の内部整数点を用いた記述について研究していたところ,多面体の逐次最小(多面体の整数点を用いて定義される不変量)とセシャドリ定数の間の興味深い関係性が得られたため.また,トーリック多様体を用いてK安定性に関する興味深い反例を見つけることができたため.
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度に定義したi番目のセシャドリ定数を,トーリック多様体の双対欠損の記述や評価に用いることができないか研究する.特にi番目のセシャドリ定数とケーリー構造や内部整数点との関係性を詳しく調べる予定である.
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