2018 Fiscal Year Research-status Report
A study of the relationship between the sectional invariants of polarized toric varieties and integral convex polytopes
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17K14172
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
川口 良 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (10573694)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 代数幾何学 / 偏極多様体 / 断面幾何種数 / トーリック多様体 / Weierstrass半群 |
Outline of Annual Research Achievements |
偏極トーリック多様体(X,L)におけるCastelnuovo多様体の特徴付けに関して, 昨年度は第i断面幾何種数g_i(X,L)を表す公式を, 従来よりも簡単なものに改良することができた. 今年度はこの公式を用いて, Castelnuovo多様体の特徴を多面体の言葉で表現することに成功した. 具体的な結果は以下の通りである. 内点を持つ凸多面体については, hベクトルに関する日比の下限定理から体積の下限(日比の下限体積と呼ぶことにする)が得られる. 偏極トーリック多様体(X,L)の場合, 直線束Lに対応する多面体の体積が日比の下限体積になっていることが, Castelnuovo多様体であるための必要十分条件になっていることが証明できた. この結果は, 9月に開催された日本数学会秋季総合分科会において発表した. 昨年度の米田氏との共同研究ではトーリックの場合において, Weierstrass半群が巡回型であることとMP条件と呼ばれる数値的条件を満たすことが同値になることを示した. この結果については, その後も米田氏との研究打ち合わせを通じて, Weierstrass半群がトーリック曲面上の曲線で実現できるための条件を考察したり, 様々な例を構成したりして結果を補強した. これらを論文にまとめてBulletin of the Brazilian Mathematical Societyに投稿し, 受理された(巻・号は未定). また, 今年度は研究内容が近いWouter Castryck氏を日本に招いて研究打ち合わせを行い, 12月の代数曲線論シンポジウムでは講演をお願いした. こちらは上記2つの結果を解説し, Castryck氏には多面体の形状から曲線のMaroni不変量を読み取る方法などを解説してもらった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度の研究報告では第i断面幾何種数の公式を改良し, これによって本研究の目的である偏極トーリック多様体の場合のCastelnuovo多様体の分類に向けてはずみがついたと書いたが, 今年度は「研究実績の概要」の項でも述べた通り, この点について順調に進展があった. もともとトーリックの場合はCastelnuovo多様体の特徴付けが, 対応する多面体に関する何らかの性質として記述されることは予想していたが, 得られた結果は「多面体の体積が日比の下限体積に一致する」という非常にきれいなものだった. そのような多面体のうち, 内点が1個のものは反射的多面体と呼ばれ, 以前から重要な研究対象と考えられてきた. その理由の一つは, これらがGorenstein Fano多様体という代数幾何学の概念と結びついていたからであるが, 今回の研究結果はこの事実の拡張にあたり, 内点が2個以上のものについてはCastelnuovo多様体と同値であることが分かった. これは日比の下限体積を持つ一般の多面体について研究することの重要性を示唆しており, 多面体の理論と代数幾何学のより広範な結びつきを示すことができたと言える. また, Weierstrass半群に関する米田氏との共同研究は, トーリック曲面上の曲線で実現できるものに関する結果だったが, やや特殊な状況であるため, そのようなものをTS型と名付け, TS型の存在条件についても追加で研究を行った. その結果, 巡回型の5次Weierstrass半群に対してはTS型になるための必要十分条件が, 7次以上のものに対してはTS型にならないための条件が得られた. 特に5次の場合の結果は, 与えられたWeierstrass半群がTS型かどうかをごく簡単な計算で判別できる条件で, 当初の期待以上の成果だった.
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Strategy for Future Research Activity |
トーリックの場合に, 偏極多様体がCastelnuovo多様体であること(断面幾何種数の上限)が日比の下限体積と等しいという結果については, 来年度中には論文にまとめて投稿する予定である. そのために, しばらくは例を作ることに力を入れる. 内点が1個だけの場合(反射的多面体)については多面体の分野で研究が進んでいるが, 一般の場合のCastelnuovo多様体(に対応する多面体)についてはこれまでほとんど関心が向けられてこなかったため, どのような例が存在するかよく分かっていない. R^nの標準基底をe_1,…,e_nとすると, {e_1,…,e_n,-e_1-…-e_n}の凸閉包Pが典型的な反射的多面体である. これまでの計算の結果, 3次元の場合はこのPをもとに作った多面体(Pを底面とする柱体など)は日比の下限体積を持つことが多いので, 一般的次元の場合もまずはこの方針でCastelnuovo多様体の例を探す. 一方, 内点を持たないような多面体は多面体論において避けられている傾向があり, 今回の研究でもそのような多面体(に対応する偏極多様体)は対象外である. 今後はそういった偏極多様体の断面種数についても考察してみたいと考えている. Weierstrass半群については, これまで次数が素数のものに限定して考えてきたが, 合成数であってもMP条件と似た条件を考えることができる. この場合, その条件と巡回性との間にどういう関係があるのかを調べるのも興味深い問題であり, 今後取り組んでいくつもりでいる. また, 研究実績の概要で触れたCastryck氏によるMaroni不変量の計算法は, かなり細かい計算によって証明していたが, 筆者の感覚では多面体の変形を用いてもっと簡単に証明できるのではないかと感じられたので, この点についてきちんと検証しておきたい.
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