2017 Fiscal Year Research-status Report
Hirzebruch-Zagierサイクルとp進L関数
Project/Area Number |
17K14173
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
太田 和惟 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 特任助教 (70770775)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 岩澤理論 / p進L関数 / オイラー系 / 楕円保型形式 |
Outline of Annual Research Achievements |
Hirzebruch-Zagier サイクルや一般 Heegner サイクルなどという特殊な代数的サイクルから構成されるオイラーシステムの研究を行なった。特に、九州大学の小林真一氏との共同研究を通じて、オイラーシステムやコリヴァギンシステムを岩澤主予想に応用する上で重要な役割を果たす、integral な Perrin-Riou twist の理論を、一般的な設定のもとで発見した。この理論は、norm compatible system よりも弱い条件を満たす system をp進整数環上の任意の指標で twist することを可能にし、特に非通常素点での岩澤主予想への著しい応用が期待される。実際にこれを一般 Heegner サイクルに応用することで、楕円保型形式に対する反円分岩澤主予想の一部を証明することに成功した。この成果に関する論文の大部分を書き終え、また、京都大学で行われた「代数的整数論とその周辺2017」とイギリスの King's college london で行われた「UK-Japan Winter School 2018 on Number theory」で成果を発表した。 並行して、楕円保型形式に付随するL関数の特殊値を補間するある種の群環の元(Mazur-Tate元)とセルマー群の階数とを比較する、Mazur-Tate のBSD型精密化予想の階数部分の研究も行った。その結果、予想を多くの場合に証明することに成功した。この成果に関しても論文をほぼ書き終えることができた。また、この成果を国内外の研究集会で数回発表し、参加者との議論を通してさらに理解を深めることにより、さらなる研究への手応えを得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該年度に取り組む予定であったある種の3重積p進L関数に関する研究は、他の研究者が先駆けて成果を発表したことから、本年度はオイラー系の研究に集中し、twistなどの重要な成果を得られた。しかしながら、Hirzebruch-Zagierサイクルから定まるオイラー系への応用がまだ行えていないため。
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Strategy for Future Research Activity |
研究集会に積極的に参加することで、オイラー系やp進L関数に関する情報収集を行いながら研究を行う。特に、今年度に得られたintegral な twist の理論を、Hirzebruch-Zagier サイクルや対角サイクルなどの特殊な代数的サイクルから定まるオイラー系へ応用する研究に取り組む。これによって、楕円保型形式やヒルベルト保型形式に対する様々な岩澤理論・主予想の研究に取り組む。より正確には、岩澤主予想の研究で重要な役割を果たすコリヴァギン系を上記のオイラー系にtwistの理論を応用することで構成し、これを用いてセルマー群の構造を解析する。 また、専門家や共同研究者たちとの研究討論を積極的に行うことで、研究を推し進めて行くと同時に新たな研究を模索していく。
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Causes of Carryover |
研究計画の微修正に伴い、購入予定であった図書のうちの数冊を購入しなかったため次年度使用額が生じた。 来年度は、図書の購入や研究集会への出張旅費、パソコン関連の物品を購入することに助成金を使用する予定である。
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