2020 Fiscal Year Research-status Report
Hirzebruch-Zagierサイクルとp進L関数
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17K14173
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
太田 和惟 大阪大学, 理学研究科, 准教授 (70770775)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | p進L関数 / 楕円曲線 |
Outline of Annual Research Achievements |
志村曲線やモジュラー曲線などに付随する特別な代数的サイクルについての数論幾何的な研究を行った。特に、それらを用いて、素数 p が惰性する虚二次体で CM をもつ楕円曲線に対する反円分 p 進 L 関数に関する共同研究を行った(九州大学の小林真一氏とカリフォルニア工科大学の Ashay Burungale 氏との 共同研究)。 素数 p が分裂する場合の CM 楕円曲線の岩澤理論は、ordinary 表現 (あるいはより一般にPanchishkin 表現)という場合の岩澤理論に該当し、さまざまな先行研究がなされており、一般的な予想が部分的に定式化されるなど理解が進んでいる。しかしながら、p が惰性する場合は全く異なる現象が起き、ordinary 表現の場合の岩澤理論の枠組みでは捉えきれないだけでなく、整数性の崩れなどの多くの困難が現れる。より一般的な設定での岩澤理論的現象を理解するために、惰性的素数に対するCM 楕円曲線の場合を最初のステップとして研究することは非常に重要であると考えられる。 本年度は、Rubin が導入した CM 楕円曲線に対する反円分p進L関数の特殊値を研究した。特に、複素L関数の値がルートナンバーにより自明に零点になるような指標におけるp進L関数での値を記述する、いわゆる Bertolini-Darmon-Prasanna 公式を得ることに成功した。もう少し詳しく述べると、非自明な指標では、p進L関数の特殊値をセルマー群の元で記述する公式を証明した。自明指標の場合にはより精密に、非自明性が複素L関数の一階微分値の非自明性と同値になるような楕円曲線の有理点を構成し、p進L関数の特殊値との関係を明らかにすることに成功した。 また、カリフォルニア大学サンタバーバラ校で行われている Seminar on Geometry and Arithmetic で、本年度得られた成果について講演した(オンライン)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定とは違うケースにはなるものの、志村多様体の一種であるモジュラー曲線の特殊な代数的サイクルを研究することで、反円分岩澤理論に関して着実に成果を得られているため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、より高次元の志村多様体やその上の久賀佐藤多様体の代数的サイクルを数論幾何的に研究することで、L関数やp進L関数に応用していきたい。そのためにも、専門家や共同研究者と研究討論を行ったり、文献にあたったり研究集会に参加することで情報収集を行なっていく。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの感染拡大により、予定していた出張を全て取りやめたために、次年度使用額が生じた。 次年度は、状況を鑑みて出張を行い、また、書籍などの物品の購入に費用を充てる。
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Research Products
(2 results)