Outline of Annual Research Achievements |
前年度までの研究で, Harris-Taylor-Soudryによるテータ関数の内積公式を, スカラー値の場合に明示的に求めていたが, これのベクトル値の場合への拡張を考察した. 次元の小さな場合には, 明示公式を得ることができ, また一般の次元についても明示公式の予想を立てることができた. 予想の証明には至らなかったものの, この予想は, このテータ関数の岩澤理論への有用性を示唆している. またこのテータ関数に対し, Bessel周期を調べることで, あるフーリエ係数の整性とあるL関数の整性が整合的であることも確かめた. とくにこの整合性により, テータ関数の法pでの非自明性をL関数の法pでの非自明性に帰着出来た. これらの結果は, 一編の論文としてまとめた.
p進L関数について, 研究を進めた. まず浅井L関数のp進化について, 考察した. p進化の存在は, B. BalasubramanyamおよびD, Loeffler-C. Williamsにより, 弱い形では得られている. 既知の結果では未解決な部分として, まず浅井L関数を与えるゼータ積分の無限素点での値を詳しく調べた. とくにE. Ghateの結果をadelicに書き換え, より扱いやすい形で無限素点での明示公式を得た. またB. Balasubramanyamとは同じ手法だが, ゼータ積分のテスト関数を取り換えることで, 素点pでの明示的な公式もいくつか得た. B. Balasubramanyamの明示公式が期待されるものとやや異なるため, これらの明示公式のうち, より適切なものを選択することが, この研究の今後の要点となる. またGL(3)×GL(2)のp進L関数についても考察した. 一般にGL(n+1)×GL(n)の場合には, F. Januszewskiによる結果がよく知られているが, n=2の場合にはこの結果の精密化の見通しを立てることが出来た. 明示公式を得るまでには至らなかったものの, 局所積分の計算および予想, 明示的なEichler-志村同型の構成など, 研究の要点をまとめた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Harris-Soudry-Taylorによるテータ関数の研究に対し, 進展があったこと, またYosidaによるテータ関数の研究に関する論文が受理されたこと, p進L関数の研究に着手したことなどから, 研究は“おおむね順調”とするのが妥当と判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
p進L関数, 肥田族の構成に注力する. p進L関数については, 現在までの研究で要点をまとめることが出来ているので, これを進める. Yosidaによるテータ関数の研究に一区切りつけられたため, さらに深い研究へ向かう. とくに肥田族の構成に着手することが, 妥当な研究方針であると考えている.
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