2019 Fiscal Year Research-status Report
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17K14178
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
田中 亮吉 東北大学, 理学研究科, 助教 (80629759)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ランダムウォーク / グロモフ双曲群 |
Outline of Annual Research Achievements |
グロモフ双曲群上のランダムウォークに対する調和測度の研究を行った。調和測度はグロモフ境界上に定まる測度であるが、他に定まる自然な測度との特異性が問題となる。例えば負曲率多様体が付随している状況では測地流の位相エントロピーを最大にする測度(パターソン・サリヴァン測度)との比較は調和測度を調べる上で基本的である。本年度はこれらをグロモフ双曲群のレベルで研究するため必ずしも多様体が付随していない状況でも測地流に対応する力学系を考え(位相流と呼ばれる)この位相流の不変測度として調和測度を調べる枠組みを定式化した。主結果はパターソン・サリヴァン測度から定まる不変測度がすべての不変ラドン測度の中で測度論的エントロピーを最大にする唯一の不変測度(族)であるということである。調和測度から定まる不変測度の場合、その測度論的エントロピーはランダムウォークの確率論的な量で計算されることがこれまでの研究でわかっている。具体的にはその値は調和測度の(自然な規格化のもとで)ハウスドルフ次元である(またこの次元はランダムウォーク・エントロピーとドリフトの比である)。この計算式は特別な場合には調和測度の特異性を調べるのに有用であることがわかっているので、この方面への応用が次の目標である。また幾何学的な応用として群上の双曲距離の擬等長クラスを強めた擬相似クラスを特定する研究を行った。具体的には、2つの双曲距離の間に平均歪み度という量を定義し、この値が取り得る最適値を取っているときそれらは擬相似であるというものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一つ目標としていた具体的な結果の論文を執筆することができたので、おおむね順調に進展しているとしてもよいのではないかと思います。
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Strategy for Future Research Activity |
今回得られた位相流についてその応用を推し進めていく予定である。論文では一つの幾何学的な応用として群上の双曲距離たちの間の擬等長を強めた擬相似のクラスを特定する問題を扱った。この手法は他にも応用があると思われるのでまずはその方面を追求していくことを考える。
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Causes of Carryover |
研究の進度により研究発表よりも論文執筆を優先したため、予定より情報収集のための旅費支出が少なかった。これを次年度にまわして使用したいと考えたため。
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